富士写真フイルムは,有機光電変換膜を使ったCMOSセンサ(有機CMOSセンサ)を開発,モノクロ画像の撮影に成功した。有機光電変換膜を使って実際の撮影に成功した研究例としては従来,NHK放送技術研究所が撮像管と組み合わせたものがあった。ただし,こちらはCMOS回路の代わりに長さ10cmほどの撮像管を使っていた。富士写真フイルムは,有機光電変換膜と,CMOS技術で形成した信号読み出し回路を半導体パッケージに封止している。このため,撮像管よりも大幅に小型で民生用カメラに適用しやすい。

 富士写真フイルムは,今回の研究成果を米国で開催された学会「IS&T/SPIE’s Electronic Imaging Science and Technology」で2006年1月18日に発表した。同社が具体的な研究内容を明かしたのは,今回が初めてである。同社は,CCDやデジタル・カメラにおける有力な開発元であるばかりか,銀塩フィルムや有機光電変換膜に使う有機色素の開発経験も豊富だ。こうした企業が「理想の撮像素子」(あるCMOSセンサの設計者)との見方がある有機CMOSセンサに名乗りを上げたことで,今後の研究・開発が加速しそうだ。