2004年初頭。夜の寒空の下で閉店後のスーパーマーケットの様子をうかがう不審な女性がいた。ガラス越しに野菜売り場をじっと見つめ,首をかしげている。

「おっかしいなあ。真っ暗じゃない」

 予想を完全に裏切られたという表情をしているこの女性は,発光ダイオード(LED)の光で野菜のビタミンCを増やす冷蔵庫の開発を進める三菱電機 静岡製作所の平岡利枝である。2004年秋の製品化に向けて開発は佳境に入っており,平岡の頭の中はビタミンCを増やすことでいっぱいだった。ビタミンCを増やす技術について調べれば調べるほど,その可能性に魅了されていった。