「太陽電池は本気でやる。将来は太陽電池で水素を造る」――。2005年末,恒例となったホンダの年末社長記者会見で同社 取締役社長の福井威夫氏は,太陽電池事業に懸ける意気込みをこう述べた。同社が選んだのは,現在主流のSi太陽電池ではなく,Cu-In-Ga-Se(CIGS)化合物の薄膜を利用した太陽電池である。熊本製作所内に年産27.5MWの工場を新設し,2007年に生産を開始する。

 ホンダが太陽電池事業に取り組むのは「このままでは自動車が生き残れない」(同社の福井氏)という思いがあるからだ。大量のエネルギーを消費しながらCO2まで排出する自動車の負のイメージを,太陽電池事業への参入で払拭したいとする。同社は発電装置としてコージェネレーション・システムを製品化しているが,使うときにCO2を排出してしまう。これに対して太陽電池は使用時にCO2を排出しない。さらにCIGS太陽電池は,製造工程で必要なエネルギーをSi太陽電池の半分にできるといい,「製造時から環境にやさしい」点もアピールする。将来は,発電した電力で水を電気分解して,水素を製造することも想定している。