日経ものづくり 特報

第三の無段変速機

ベルトでもローラでもなく,リングで力を伝える

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自動車の燃費を良くする手段として
普及が進む無段変速機(CVT)。
ベルトを使うタイプはすっかりお馴染みになった。
ローラを使うタイプがこれを追ってはいるが,
ベルトに食い下がるほどの勢いはない。
そこに登場したのが,NTNが開発した第3の方式。
ベルトでもなく,ローラでもなく,
リングで回転力を伝える。
構造と制御が簡単で,
安価で小型にできるという特徴が売りだ。

 CVTは小さなクルマでは完全に主流になった。今のところ,ベルトを使うタイプが圧倒的なシェアを持つ。
 ベルトに頼らないCVTでは,日本精工がローラで力を伝える「ハーフトロイダル型」を開発,既に日産自動車に納めている。ところが,適用モデルは増えるどころか減る方向。「量産してコスト低減につなげよう」という好循環が効かず,普及は失速気味だ。一方,光洋精工(2006年1月からはジェイテクト)は英Torotrak社と共同でローラを使う「フルトロイダル型」を開発しているが,商品化には至っていない。
 そこに参入を表明してきたのが,ベアリング3社のうち,同業2社の動きを横目で見ていたNTN。ベルト式でもなくローラ式でもない「リング式」という新方式を提案し,他社とは違う特徴を打ち出した。

ベルトを外しリングに
 構造は大づかみに言うとベルト式CVTからベルトを外してリングを組み込んだもの。リングの断面形状は外周側が大きく内周側が小さい台形で,プーリのV溝と密着する。入力側のプーリはそのまま残し,ベルトがリングに代わっただけだが,出力側にプーリは見当たらない。リングの外側にギアが切ってあり,それが出力ギアとかみ合う(図)。つまり回転力はプーリ→リング→ギアと伝わる。
 リングは中心軸を持たないため,周囲3カ所のガイドローラで取り囲んで位置を決める。これらのガイドローラを一つのキャリッジに固定し,リングに対する相対位置が変わらないようにする。このキャリッジ全体がリングとともに動く。
 三つのガイドローラのうち下側の一つには同軸でギアがある。リングの外側にあるギアは,このギアとかみ合って出力を伝える。この1個が,キャリッジの回転中心でもある。こうすれば出力軸の位置は動かない。
 リングの外周は,両肩の部分を除いた中央部だけにギアが切ってある。両肩はギアの歯底円より少し小さな直径のローラとして,ガイドローラからの力を受ける円筒部だ。

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図●リング式CVT