日経オートモーティブ 解説

 自動車メーカーや国土交通省などが次世代の安全技術「インフラ協調型システム」の開発を進めている。
 これまでのぶつからないための予防安全技術は、カメラやレーダなどを活用する自律型システムだった。このため、クルマから見える範囲の障害物しか検知できず、交通事故を防ぐには限界があった。次世代技術では、通信を活用することでカーブの先の障害物など見えない範囲の障害物を検知することも可能になる。
 ただし、こうしたインフラ整備には時間がかかる。国土交通省は、インフラ協調型システムを早期に実用化するために、当面は既存システムを活用する考えだ。現在普及している、高速道路での自動料金収受システム「ETC」や渋滞情報配信システム「VICS」などのインフラを使う。2007年にはVICSの電波ビーコンの通信能力を向上させるために、ETCと同じ5.8GHzと統一して4Mbpsの通信を可能とする方針。さらに、2010年ごろにはそれまでのシステムを一新して本格的なインフラ協調型システムを実用化させたい考えだ。

事故軽減にはインフラ協調が必須
 次世代の安全技術であるインフラ協調型システムは、クルマと道路が通信する「路車間通信」とクルマ同士が通信する「車車間通信」に分かれる。国土交通省などがインフラ協調型システムの導入を急ぐのは、交通事故件数が年々増え続けているためだ。2004年の交通事故は約95万件で、死傷者数は約119万人に上る。交通死傷者数のうち特に多いのが「追突」や「出会い頭」事故によるもので、死傷者数は増える傾向にある(図)。

日経オートモーティブ 解説
図●交通事故死傷者数の推移(分類別)
追突や出会い頭の事故が多い。車車間通信や路車間通信などの、インフラ協調型の安全走行システムの導入が望まれている。