携帯機器向け燃料電池の実用化時期が近づいている。各メーカーは試作機を作って展示会で一般ユーザーに使ってもらったり,社内で試験運用したりするなど,実用化に向けた最終チェックに余念がない。幅広い機器を対象に燃料電池の研究開発を進める東芝の技術者が最新状況を解説する。(河合 基伸=本誌)

上野 文雄
東芝
ディスプレイ・部品材料統括 技師長

 燃料電池には,家庭などで使うコージェネレーション・システム向けや自動車向け,携帯機器向けなどがある。例えばコージェネレーション・システム向けは,発電時に出る熱を利用して給湯に用いることでエネルギー効率が高まるという利点がある。今回説明する携帯機器向けは,携帯機器の電源が切れた場合でも燃料を補充すればすぐにそのまま使える点が特徴である。燃料を充填する場合に機器の電源を切る必要はなく,しかも充填に要する時間も非常に短いため,機器を継続的に使うことができる。