「燃料電池車の量産を2004年に年間4万台規模で開始し,2007年には同10万台まで高める」――。キッカケは1997年12月,ドイツDaimler-Benz AG(現DaimlerChrysler社)が行ったこの宣言だった。これによって燃料電池が一躍脚光を浴び,その後,自動車のみならず携帯機器などへの搭載も目指し,開発競争に火が付いたのは周知の通りである。

 燃料電池は電池とはいうものの,発電機に近い。水素などを投入することで発電する。歴史は古く,1839年に英国のWilliam Grove氏が発電に初めて成功した。種類は電解質膜の材料や作動温度によってリン酸型,溶融炭酸塩型,固体電解質型,固体高分子型に大別できる。初の実用化は1965年。フライト記録などの電源として,米国の宇宙船ジェミニ5号に搭載された。発生する水が飲料水として使えることも評価されたようだ。この燃料電池は米General Electric Co.製の固体高分子型で現在,開発競争が繰り広げられているものと同じ種類である。だが,当時は電解質膜のポリスチレン系樹脂が化学的に弱く,寿命が短かった。