2005年11月,ソニーの発表が燃料電池関係者を驚かせた。独自の技術を盛り込んだダイレクト・メタノール型燃料電池(DMFC)で,最大出力密度100mW/cm2を実現したというのである。燃料や空気の供給にポンプやファンを使わない「パッシブ型」を用いて,従来可能とされてきた値の2倍を達成したことになる。これが製品になれば,携帯電話機に必要な2W程度の電力を,本体に内蔵できる燃料電池で賄うことが可能になる。

 ソニーが発表したDMFCをはじめ,新方式の燃料電池の開発が激化している。ソニーのように既存のDMFCを改良したものから,エタノール(C2H5OH)やエチレングリコール(HOCH2CH2OH)など新規の燃料を使った固体高分子型燃料電池(PEFC),液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(CH3OCH3)などを燃料とする固体酸化物型燃料電池(SOFC)など,さまざまな方式の提案が相次いでいる。

 2007年にも携帯機器向けに製品化されるDMFCを第1世代とすれば,これらは第2世代の燃料電池といえそうだ。いずれも,製品化で先行する第1世代のDMFCと比べて,出力や安全性などを高めることができる。実用化の目標時期は2008年ごろである。