日経ものづくり 開発の鉄人

第18回 激安市場の隣りに勝機あり

「開発の鉄人」こと 多喜 義彦

「価格競争を離れて利幅を取ろう」というと,
どうしても高額商品に目が行ってしまう。
しかし,100円ショップにあるような商品を
頭から敬遠することはない。
もちろん,そんな激戦区に無造作に参入するのは無謀だが,
その周辺には工夫次第で勝機がある。
激安市場の周りは意外に狙い目なのである。


 「なだ万」で食後に使うようじが,このごろ変わったことにお気付きだろうか(図)。えっ,なだ万に行ったことがないって。いろんな所に行った方がいいよ。何が開発のヒントになるか分からないからね。
 以前のようじは「黒文字」ってやつだった。お茶の席なんかで出てくるよね。皮が付いてて,いかにも手作りって感じで高級感がある。見た目はいいんだけど,実は先端が太くてね,歯と歯のすき間に届かないこともある。

丸くて,しかも三角
 ところが,今使っている「歯間ようじ」は違う。全体の断面は丸いんだけど,先端は2面をそいだ形をしている。だから残った円弧と合わせて三角形に近い断面になる。歯の方も,すき間を挟む両側の歯と,その間の歯茎で三角形になる。三角形同士で,ようじがすき間にきれいに入る。歯の表面と歯茎に面で接するから,歯に詰まった食べカスをきれいにかき出せるし,歯茎へのマッサージ効果もある。これは快適だ。
 だから,機能を考えると,黒文字だけでなく,断面が丸い普通のようじも間違っている。丸いものは海外では「カクテルピック」といって,もともとは料理用だ。これに対して断面が三角形のものは「デンタルピック」と呼ぶ。ただ,丸ものの方が加工しやすく,安い。いつの間にか日本では「丸」がようじの主流になった。

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図●「なだ万」のようじ
袋の中に歯間ようじが入っている。