「これまでは『右足にもう少し体重をかけて』というような曖昧(あいまい)な表現しかできなかった。それが、この機器を使えば画面の数字を見せながら具体的に指示できるようになる」(社会福祉法人シルヴァーウィング理学療法士の門馬一悦氏)――。
社会福祉法人シルヴァーウィングが運営する「特別養護老人ホーム新とみ」は2015年8月4日、リーフの歩行リハビリ支援ツール「Tree」を導入した。Treeは、歩行能力に問題を抱える患者・要介護者の歩行訓練を支援するロボットである。
利用者の目線の先にある液晶画面に、利用者の両足の画像と右足・左足の移動先となる目標位置のシンボルを表示。患者がTreeのハンドルを握りながら画面の目標位置に向けて右足、左足を交互に動かすと、Tree本体も利用者の速度に合わせて、音声ガイダンスを出しながら移動していく。
利用者はTreeでの歩行訓練時に、専用のインソール(靴の中敷き)を装着する。このインソールは利用者のふくらはぎ裏に取り付けた親機を経由してTree内部のコンピューターとBluetoothで接続されており、左右両足のバランス、足裏にかかる圧力の分布、足裏の接地位置、踏み出しタイミングなどの測定データをTreeへ送信する。Treeは、歩行速度などの基本データに専用インソールの測定データを組み合わせて、「歩行動作の安定」「歩幅の向上」「歩行時の姿勢改善」など訓練の効果を定量的に判断する。
Treeでは訓練の指導者だけでなく、患者・要介護者自身も画面の数値で歩行訓練の効果をその場で確認できる。このことは「歩行訓練のモチベーションを高める効果がある」(門馬氏)。さらに、訓練の効果を客観的な数値データとして利用者ごとに保存・管理できるため、指導者が交代しても属人性に依存せずに適切な指導を行えるというメリットがある。