日本版CCRCの動きが活発になりつつある。CCRC(Continuing Care Retirement Community)とは、高齢者が元気なうちに新たなコミュニティーへと移住し、介護が必要になっても持続してケアを受けながら暮らしていくこと。コミュニティーには住居のみならず、クラブハウスやスポーツ施設、多世代との交流スペースなどを設け、居住者たちの有機的なコミュニケーションも大きな要素となる。すなわち、単なる“箱モノ”に終わらないのが特徴だ。

 CCRCは米国で発展したスタイルだが、日本では政府による地方創生の施策と連動し、高齢者移住の活性化を促す狙いもある。それに伴い、地方における新たな人的交流・経済的効果も期待されている。こうした背景から、2015年春に内閣官房の「まち・ひと・しごと創生本部事務局」が実施したアンケートでは、全国で202の地方自治体が日本版CCRCに対して推進の意向を示した。

 2015年7月8日、日本版CCRCの政策提言に関わる三菱総合研究所の大会議室にて、「日本版CCRC推進会議 第3回」が開かれた。北九州市の担当課長、介護サービス事業者の社長、SUUMO編集長、国土交通省の不動産投資市場整備室長が4者4様の立場からCCRCについて発表した。

 筆者は第2回の報告会(2015年5月20日)にも足を運んだが、今回もそのとき同様、100人以上は入るであろう会場は満員となった。後の質疑応答では、岩手、愛知、千葉、茨城からの参加者が質問。その中にはサービスを始めようとしている民間企業のみならず、自治体関係者もいた。

 最初に登壇したのは、北九州市 総務企画局 地方創生推進室 地方創生推進担当課長の岩田健氏だ。北九州市では、まさにこれからCCRCの実証を始めようとしている。岩田氏は北九州市の特徴として、96万人の大都市ながらも「適度な街があり、農村があり、海がある」と説明。

北九州市 総務企画局 地方創生推進室 地方創生推進担当課長の岩田健氏
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 また、年収は下がるものの、それとともに物価が下がり、通勤圏に車で30分程度でたどり着けるアクセスの快適さなどをアピール。「米国の場合、東海岸に住んでいた人が西海岸に移住するといった例がたくさんある。日本社会全体も意識を変え、どこに移住してもいいという考えになっていけばいい」(岩田氏)と話した。