講演する落谷氏
講演する落谷氏
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晩期再発や脳転移の謎を解く

 乳がんでは治療後10~20年といった歳月を経て再発するケースがしばしば見られるが、ここにもエクソソームが関与している可能性が指摘されている。こうした晩期再発では再発までの間、乳がん細胞は骨髄の中で長く“休眠状態”にある。実は最近、正常細胞が分泌するエクソソームを「乳がん細胞が横取りし、これによって骨髄中で休眠状態を保ち、生存していることが分かってきた」(落谷氏)というのだ。

 がんの脳転移との関係も明らかになりつつある。脳は異物の侵入を防ぐ血管脳関門(blood brain barrier:BBB)と呼ばれる機構を備えるが、なぜがん細胞がこれを突破して脳に転移できるかが、エクソソームで説明できるようになってきた。がん細胞が「エクソソームを制御してBBB(の関門)を開ける」(同氏)という。

 この際、エクソソームによって運ばれる特定のマイクロRNA(マイクロRNA-181c)が大きな役割を果たす。例えばある研究では、乳がんの脳転移例のほぼ全例にマイクロRNA-181cの発現が見られた。マイクロRNA-181cが、乳がんの脳転移のマーカーになる可能性を示す結果だ。