「せっかく銀座に行くのだから」

 スヴェンソン名古屋サロンの長屋氏はメディカルカフェの会場を提供する立場からコメントした。医療用ウィッグは販売したら終わりではなく、顧客とはサポートなどで治療期間ずっと付き合うことになる場合もあるという。そこで同じ悩みを持った人との交流の場がほしいという要望が多く寄せられ、メディカルカフェを開くきっかけとなった。カフェではウィッグの相談だけでは聞けない話も多く、そこから得たヒントでサバイバーをよりよくサポートできるようにしていきたいとした。

 共催の資生堂は化粧品メーカーで、がん患者のケアと関わりが薄そうに思える。メディカルカフェにも直接は関わっていない。こうした中、横山氏は「これまでもがん患者へメイクのアドバイスをする活動を行ってきた」と語った。

 がんに罹患したり、治療の経過で外見に変化が現れたりすると外出しなくなってしまうケースが多い。外出できないと、気持ちが落ち込みやすくなる。そこで2014年に公開講座を東京で開催した際は、あえて心理的なハードルが高そうな銀座を選んだ。「せっかく銀座に行くのだから」とおしゃれをして、外出すること自体を楽しんでほしいという思いがあったためで、応募者からも「楽しみでわくわくしている」というコメントがあったという。メイクをきっかけに気持ちを上向きにし、がんと向き合って前に進めるようになる手伝いをしていきたいとした。

 基調講演も行った竹川氏は、サバイバーがメディカルカフェに関わることにより、自分より苦しんでいる人に何かしてあげたいと思うことで自分自身も前向きになれるとした。また「病院での指導では行き届かない部分も出てきてしまうため、企業の支援が受け皿になり、治療中のセルフケアなどについて患者に伝えてもらえるとありがたい」と語った。メディカルカフェのような活動が広がり、やがてがん患者への支援が話題にもならなくなるほど当たり前となる社会になってほしいと結んだ。