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 北里大学 医療衛生学部医療工学科 臨床工学専攻 教授の馬渕 清資氏は、「科学知総合研究所(SKIL) 未来フォーラム4」(2015年4月20日、主催:特定非営利活動法人 科学知総合研究所)に登壇し、「バナナの皮の滑りから学ぶ人工関節のデザイン」をテーマに講演した。

 同氏はユーモアで笑わせた後、なるほどと考えさせる研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」を昨年受賞したことで知られる。東京工業大学工学部出身。関節について研究している中で、軟骨の中から液体が沁み出し、その液体が潤滑することで低い摩擦を実現している、という内容を大学4年生の卒業論文で紹介。その時点で既にバナナとよく似ていると思っていたという。さらに、大学卒業後、北里大学医学部で研究に従事していた際に執筆した著書「バイオトライポロジー」でも関節について「バナナの皮を踏んだときのすべりのよさ」と例えて紹介していた。

 しかし、その後バナナが滑るというのは周知の事実でありながら、実際に滑りやすさを示したデータが無いことに気付き、研究を始めたという。実際に試してみると、そのままの状態ではバナナの摩擦係数は高く、滑るか滑らないかは押さえつける力によって決まることを確認。多軸荷重センサを使った測定装置を作り、床材の上にバナナの皮を置いて踏むという実験を行うことで、ようやくバナナの皮があると無い場合に比べて6倍滑りやすく、関節には及ばないものの、金属より摩擦係数が低いことなどを実証できた。