本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1154号(2015年1月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 これまで形にする「加工プロセス」が困難だった「作れないモノ」が、3Dプリンター技術によって作れるようになった。山形大学の筆者らのグループは、柔らかく変形しやすいゲル材料の3次元造形に注目した。本稿では、独自に開発を進めてきた、高強度ゲルを造形する3Dゲルプリンター「SWIM-ER」と、食べ物を造形する食品3Dゲルプリンター「E-CHEF」を紹介する。

光造形3Dゲルプリンター「SWIM-ER」
(Soft and Wet Industrial Materials-Easy Realizer: SWIM-ER)

 ゲルとは、網目状の高分子鎖が水などの溶媒を吸収し膨潤したものである。高分子鎖と溶媒が相互作用しているため、溶媒は外にあふれずにとどまっている。

 例えば、人の体は広い意味でゲルと考えられる。約60%は水分で、その水分はタンパク質という高分子との相互作用によって体内に保たれている。生体組織のうち、血管、筋肉、軟骨、腱、靭帯などの軟組織は、水分を50〜80%含んだゲルである。そして、これらの軟組織の人工的な代替物の作成は、潤滑性、衝撃吸収性、物質透過性をすべて持つゲルでのみ実現可能である。