筆者は、若いエンジニアが設計した回路図や基板レイアウトをチェックする際に、いつも決まって行うことがある。それは、いくつかの部品を拾い出し、「なぜ、この部品を選んだのか」と尋ねるようにしていることだ。

過去の回路図を見て、真似しただけ

 筆者が、こうした質問を投げ掛けるには理由がある。それは、設計において決断された事柄にはすべて正当な理由があるはずで、それをエンジニアが十分に理解しているべきだと考えているからだ。  例えば、バッファーとして使われるオペアンプの帰還回路に抵抗が配置されていれば、即座に「どうして?」と質問したくなる。ところが、である。帰還回路に抵抗を配置した理由を分かっていないエンジニアがとても多い。過去の回路図に入っているのを見て、それを真似しただけで、単純に配置してしまったのだろう。

 最も一般的な帰還抵抗R2の役割は、低速な用途(50MHz未満)において、オペアンプの入力バイアス電流によって発生する直流(DC)オフセット電圧を相殺することである(図1)。しかし帰還抵抗R2は、その値によっては、この役割をほとんど果たさない。

図1 帰還回路に抵抗を配置したオペアンプ利用のバッファー回路

 ほかにも帰還抵抗R2の役割はある。例えば、出力で静電気放電(ESD)による破壊が発生した際に、反転入力をある程度防止する役割だ。さらに、接合型電界効果トランジスタ(JFET)入力タイプのオペアンプでは、帰還抵抗R2を使って入力インピーダンスとソースインピーダンスを整合させれば、歪みを低減できる。