HbA1cは、ヘモグロビンと血管内の余分なブドウ糖が結合したグリコヘモグロビンの1種で、HbA1c値によって、過去1~2カ月の平均的な血糖値を知ることができる。飲食の影響を受けにくく、1μLの血液で測定可能。30分以内に結果が分かり、医療費がかさみがちな糖尿病との関連が深い。HbA1c値だけで糖尿病と判断することはできないが、受診勧奨の材料としては十分という。

講演する浮田氏。薬局での簡易検査は店舗の活性化につながることなどから、OTC医薬品業界にとっても歓迎すべきものという
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糖尿病診断アクセス革命

 簡易検査では、消毒した後、専用の毛細管を使って指先から採血し、検査チップなどに収めて、検査装置にセット。結果がプリントアウトされ、HbA1c値が6.0以上なら受診勧奨を受ける。廃棄物を適切に処理して検査は完了だ。

 検体測定室の制度が成立する以前から、指先採血HbA1c測定装置を薬局店頭に設置して研究を進めてきたのが、筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科の准教授である矢作直也氏である。同氏は、未発見の糖尿病や予備群の早期診断を促す「糖尿病診断アクセス革命」に取り組んでいる。

 東京都足立区では矢作氏の研究に賛同・協力し、2010年10月から区内10薬局でHbA1c検査を実施。2014年1月~2015年1月には1220人が検査を受け、226人が受診勧奨を受けた。検査後のアンケートには、226人中56人が応じ、このうち42人が実際に受診したと回答した。受診勧奨対象者の少なくとも2割が受診したことになり、病気の早期発見・治療に一定の効果があることが分かったという。