医療ビッグデータの目的は…

 ここで座長の石井氏が「チーム医療の時代だけに、さまざまな関係者とコラボする機会が増えてくる。データの守秘義務、倫理に目配せしなくてはいけないのではないか」と質問。これには山本隆一氏が「そのために今、ルールづくりをしている。現在進行している個人情報保護法改正案も踏まえて、今後は指針の見直しも十分に考えられるが、データを提供するガイドラインを明示的に、誰が見てもわかるようにルール化していかなくてはならない」と、ガイドライン策定についての方針を明かした。

東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学講座特任准教授の山本隆一氏
[画像のクリックで拡大表示]

 続いて大阪府医師会の医師が「医療ビッグデータは国民のために用いるデータ。目的が定まっていないと、ビッグデータに両手を挙げて賛成できない部分もある」との懸念を述べた。これに対しては、山本隆一氏、石川ベンジャミン光一氏、山本雄士氏がそれぞれの立場から次のように語った。

 「医療機関が行なった行為から取ったデータは、もちろん目的があって編集されて提出している。そのデータを集約して、医療費適正化計画に資するために分析するという法律でデータベースが作られた。誰かが独占して何かをするのはできる限り避け、これらを活用していろんなスナップショット、インテリジェンスを作るというのは、進めるべきだろう」(山本隆一氏)。

 「ビッグデータは医療機関の発生源から2次利用の時点でセキュアな枠組みを作るべき。その上で例えばデータの解析場所を提供して、さまざまな人に活用してもらう。ただこうした予防面だけで上手く行かない部分は、やはり政策面での保証が必要になる。今後、クリニカルインディケーター(医療の質の指標)によって、医療の内容が策定できるようになれば、品質を保証していくことも可能。医療を定量的にきちんと評価していくさまざまな指標を作っていく必要があるだろう」(石川ベンジャミン光一氏)。

 「悪意を持ったデータ活用は罰するべきだが、さまざまなプレーヤーが思いを持って集まっている医療の世界を見ると、利害が不一致の中でそれぞれが自身の言いたいメッセージを出すために情報を使うことも止められない動きとなっている。そうした場で主張できるだけの根拠を作っていくというのが、これから我々に求められているのでないか。利害のすり合わせという意味では、これから取り組むべき課題は多い」(山本雄士氏)。