「ビッグデータ時代の医療と臨床家の在り方」――。2015年2月12日に開催された平成26年度 日医総研シンポジウム「日本における医療ビッグデータの現状と未来」において、ミナケア 代表取締役の山本雄士氏がこのようなテーマで講演した。

 山本氏は1999年に東京大学医学部を卒業後、東京都立病院、東京大学医学部附属病院にて臨床医を務めた後、2007年に日本人医師として初めてハーバードビジネススクールを修了。2011年にミナケアを設立した。ソニーコンピュータサイエンス研究所の研究員としても活動している(山本氏のインタビュー記事「“病院の外”から医療を変える」はこちら)。

ミナケア代表取締役の山本雄士氏
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 山本氏はまず、臨床判断のエビデンスの数が爆発的に増えていると語り、「もはや人間の処理能力を超えている。例えば心臓の超音波検査の論文のすべてに目を通すには、1時間で5本のペースで読んでも20年間かかる」と具体的な例を示した。

 こうした情報過多の状況に加え、「現在は診断と治療を施して医療が完結する時代ではなく、個人が取得した健康情報や歩数記録、カロリーの管理記録、介護データなどを臨床検査のデータとどのようにつなげていくのか。データの連結作業領域が広がっている」とも強調。ビッグデータの登場により、ますます医療の本質が問われ、社会における医療の意義や医療専門職の役割の見直しが必要であると語った。