電気化学的に測定する

 血液のかわりに汗、間質液、涙、唾液、尿などの体液、分泌液を測定することによって採血を不要にする測定方法も古くから提案されている。非侵襲でセンサーに体液を接触させることができるので、酵素電極法が実用化されてからは、小型で安価なバイオセンサーを用いて容易に測定ができる利点が大きい。ただし、これらの体液中のグルコース濃度と血糖値は直接比例しているわけではなく、血糖管理のための指標として適切であるとは限らない。

 2001年に米国のCygnus社は、皮膚に貼り付けたパッチ電極で間質液を吸い上げることにより非侵襲でグルコース濃度を測定する「GlucoWatch」を発表した。GlucoWatchはFDA(米国食品医薬品局)の承認を受け、2002年に米国で発売された。非侵襲で測定できる初めてのSMBG(血糖自己管理)であり、かつ常時装着して血糖値の変化を測定・記録するCGM(持続血糖測定)の先駆的な製品だったことから大きな注目を集めた。

 しかし、Cygnus社がベンチャー企業で製造・供給体制が不十分だったこと、30%程度の測定誤差を生じる場合があること、パッチ電極の寿命が12時間と短く頻繁に交換が必要だったこと、販売委託契約を結んだ三共ファーマシーとトラブルを生じたことなどから売り上げが伸びず、2004年にAnimas社に事業を売却した。Animas社は2007年にGlucoWatchの販売を中止した。

この記事は「血糖値センサー技術に関する特許分析と事業化動向」(発行:キャップインターナショナル)から一部を抜粋・編集したものです。