血液中のグルコース(血糖)値の調節が不全になる疾患を糖尿病と呼ぶ。血糖は大脳のエネルギー源となる重要な物質で、食事によって血糖値は上昇し、空腹時や運動時は低下する。

 極度の低血糖になると意識障害や全身の機能低下から死亡に至ることもある。極度の高血糖では多尿、嘔吐、意識障害などの症状が表れ、やはり死亡に至ることもある(糖尿病性ケトアシドーシス)。症状が現れない程度の高血糖でも、持続すると毛細血管を損傷して心臓、網膜、腎臓、神経などに回復不能な病変を生じる(糖尿病合併症)。

 血糖値の調節の働きを担っているのは、膵(すい)臓で生産される血糖値抑制ホルモンのインシュリンである。高血糖時は分泌を増やし、低血糖時は分泌を減らして血糖値を適正な範囲に保つ。特に、食事後の高血糖状態を早期に解消するためにインシュリンは重要な働きをしている。

 膵臓の病変によってインシュリン分泌が不能になった疾患を1型糖尿病と呼ぶ(表1)。毎日1~4回のインシュリン注射と血糖値の管理が必須であり、患者自身による自己注射と血糖自己測定が必要になる。

表1●糖尿病の型
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