「糖尿病が強く疑われる者」「糖尿病の可能性を否定できない者」の推計人数の年次推移(20歳以上、男女計)。出所:厚生労働省の「平成24年 国民健康・栄養調査結果の概要」
「糖尿病が強く疑われる者」「糖尿病の可能性を否定できない者」の推計人数の年次推移(20歳以上、男女計)。出所:厚生労働省の「平成24年 国民健康・栄養調査結果の概要」
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 2015年度からすべての健康保険組合に実施が求められる「データヘルス」。診療報酬明細書(レセプト)や特定健診の情報を生かしたデータ活用型の保険事業のことだ。データヘルスを主導する厚生労働省がその重要なターゲットと見定めているのが、糖尿病の予防である。

 厚労省の2012年の調査によれば、糖尿病患者(強く疑われる者)は全国で950万人と推定される(pdf形式の調査結果概要)。2007年の調査結果(890万人)から60万人増えた。1100万人と推定される糖尿病予備軍(可能性を否定できない者)を含めると、実に2050万人が糖尿病の傾向を持つとみられる。

患者の1/3は受診せず

 2015年1月に開催された「第49回 日本成人病(生活習慣病)学会学術集会」(都市センターホテル)では、東京医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授の小田原雅人氏が特別講演に登壇。「経口血糖降下薬 Update」と題し、糖尿病の現状や治療薬の開発動向を紹介した。

 小田原氏によれば、950万人と推定される糖尿病患者の病院受診率は63~64%。患者の「1/3は放置している」。医療側も、満足な診療体制を整えられていない。糖尿病専門医は全国で5000人弱といい、患者の増加に追いつかない状況だ。ここ数年で優れた経口治療薬が続々と登場しているが、選択肢が増えたことで医師にとっては「使い方が難しくなっている」という側面もある。

 糖尿病患者の増加の背景には、男性を中心に肥満者が増えていることがある。糖尿病と肥満の間には強い相関があるのだ。ただし、日本人の平均摂取カロリーは長年ほとんど変化しておらず、食事以上に「運動不足が大きな要因となっている」というのが小田原氏の見立てである。