本記事は、日経WinPC2012年6月号に掲載した連載「PC技術興亡史」を再掲したものです。社名や肩書などは掲載時のものです。

 HDDには容量のみならず、高速化も求められ続けている。IDEの規格では1998年のANSI INCITS 317-1998(ATA/ATAPI-4)で33MB/秒までの転送モードに対応したが、「より高速に」という要求は尽きなかった。

 高速化は容量の増加とも密接に関連した。HDDの容量は、基本的にディスクの記録密度で決まる。記録密度は1990年代前半~後半が年率60%程度の伸びだったのに、1990年代末~2000年代前半は年率90%という恐ろしい伸びを見せた。

 記録密度が上がると、自動的に速度の向上につながる。容量が2倍になると、1ビットの記録に必要なエリアの幅と長さは、それぞれ0.7倍になる。その結果、理論的にはディスク1周分のデータを読み出すと、データ量が約1.4倍に増える。ディスクの回転速度は5400回転/分や7200回転/分で変わらないので、読み出し速度は1.4倍になる。この高速化ペースに対応するため、より高速な規格を策定する必要があった。

 2000年には転送速度を最大66MB/秒まで引き上げたANSI INCITS 340-2000(ATA/ATAPI-5)が策定される。従来の40ピンのフラットケーブルではそろそろ無理と判断され、80ピンに拡張された。