けいはんな学研都市では、生活の質を落とすことなく、地域全体の省エネ、省CO2を実現するため、「けいはんなエコシティ次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト」を展開し、家庭・業務・運輸などを対象に取り組みを推進している。その内容は、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)、EV(電気自動車)100台を対象としたEV充電管理システム、これら需要家EMSと連携し地域全体のエネルギー需給をマネジメントするCEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)、さらには実証地域の約700世帯を対象とした大規模電力デマンドレスポンス(需要応答)など、多岐にわたっている。そこで、けいはんなエコシティ次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト推進協議会会長である京都府の山下晃正副知事に、実証プロジェクトの最新状況や将来について話を聞いた。

――けいはんなエコシティ次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクトの取り組みの背景や進捗について、どのように見ていますか。

山下副知事 概ね、スケジュールどおりに進んでおり、新しい成果が得られています。

 けいはんな学研都市では、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)やRITE(地球環境産業技術研究機構)、NICT(独立行政法人情報通信研究機構)などの国際的な研究所や、実証プロジェクトに参画いただいているオムロンなどの研究所が集積するとともに、周りに住宅が次々と建設されており、新しいまちづくり、新しい地域の文化づくりをしなくてはいけない地域だと考えています。都市名に「文化」が入っているのが、他の学研都市とは異なるところです。

 そこで、「エコを地域の文化に」を合い言葉に、住民の方などのご協力を得て、グリーンイノベーションの取り組みを進めています。実証プロジェクトもその一つです。

実証はスマートコミュニティの実現に必要

山下副知事 けいはんな実証では、住宅やビル、EVを対象とするエネルギー・マネジメントに加え、地域全体としてのエネルギー・マネジメント、大規模電力デマンドレスポンスなど、住民の方やテナント利用者などを対象に、様々なアプローチを試みています。その中で、参加者と参画企業とが一体となって課題を抽出、検証し、得られた成果を国内外に展開していく必要があります。

 加えて、府独自の事業として、グリーンイノベーションに関わる産業をこれからの成長産業と位置付け、多様な技術を持った人が集まる仕掛けを作りたいと考えています。そこで京都府では、京都市や産業界と連携し、京都産業エコ・エネルギー推進機構という組織を立ち上げ、実証フィールドである京田辺市内に「京エコハウス」を建設し、4つの電源(太陽光発電、風力発電、リチウムイオン二次電池、燃料電池)をベストミックスして、家庭内のエネルギーを自前で賄えるかどうかや、HEMSによるエネルギー消費の見える化、照明やエアコンといった家電の自動制御の実験などを行っています。

【写真1】けいはんなe2未来(イーミライ)スクエア
けいはんなの実証では、取り組み内容を紹介するショールーム「けいはんなe2未来スクエア」を運営している(要予約)。2013年度の訪問者は1600人を超えた。さらに2013年、隣に小中学生向けのショールーム「けいはんなe2未来まなびパーク」を開設した。(撮影: けいはんなエコシティ次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト推進協議会)