「避難生活の中、とうとう4回目の正月を迎えてしまいました…」。2015年1月5日、福島県飯舘村の菅野典雄村長は、年頭の訓示をこう切り出し、長引く避難生活の苦悩を率直に語った(図1)。東日本大震災による福島第一原発の事故後、原発の北西40kmに位置する飯舘村は、約6000人の全村民が避難を強いられた。

図1●今年1月の菅野村長による年頭訓示の様子(出所:飯舘村)
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 飯舘村は、阿武隈山系北部の高原にあり、豊かな自然に恵まれた美しい村。約75%を森林が占める。東日本大震災の地震動そのものによる被害は比較的、軽微だったものの、風向きなどの条件が重なり、原発事故で飛散した放射性物質による汚染は深刻なものとなった。2011年4月に、放射線量が年間積算20ミリシーベルトに達するおそれがある「計画的避難区域」に指定された。

 2012年7月には、「計画的避難区域」から、「避難指示解除準備」「居住制限」「帰還困難」の3区域に再編された。再編後は「帰還困難」を除いた区域では一部事業再開が認められ、2014年12月1日現在、42の事業所が村内で事業を再開している。村内では、避難指示解除に向け、国による除染作業が進んでいる(図2)。

図2●飯舘村での農地除染の様子(出所:飯舘村)
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