出典:『稼ぐビッグデータ・IoT技術 徹底解説』の第2章 先進事例(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 ヘルスケア情報分野は、日々の生活状況から医療、介護に至るまで、我々の健康に関わる多様かつ長期間の情報を取り扱う分野である。近年、ウエアラブルなセンサーの開発をはじめ、カルテやレセプトなどの診療情報の電子化が急速に進み、その分析や利活用に向けた取り組みが精力的に実施されている。例えば、電子カルテに蓄積された情報は、疾患の重症度や患者の状態に応じた効果的な治療方法の研究などに活用されている。本稿では、生活習慣病などの医療費増加を抑制する手段として注目されている疾病予防の分野を中心に、ヘルスケア情報処理の事例を紹介する。

1 Population Health Management

 米国を中心に、Population Health Management(PHM)の考え方が注目を集めている。これは、地域住民へのヘルスケアサービス全体を、医療機関での診断治療だけではなく、予防から予後までを含めて最適化するものである。具体的には、集団全体の健康状態を分析した後、個人の疾病リスクに応じて最適なサービスを提供していくものであり、地域の医療コストの最適化が期待されている。日立では、図1に示すような全体像を描きつつ、PHMの実現に向けた取り組みを進めている。PHMの特徴は患者だけではなく健康な人も対象とすることにあり、特に生活習慣病を中心とした疾病予防の導入にある。

図1 日立が描くヘルスケア情報領域の全体像
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