青森県立中央病院は、2011年6月からの基地病院としてのドクターヘリ運航に伴い、ドクターヘリ運用管理データベースを構築、運用を始めた。病院独自の管理項目、あるいは機能追加・変更に院内で柔軟に対応できるようにとプラットフォームとしてFileMakerが採用された。このデータベースシステムの開発経緯と内容、有用性についてレポートする。

救急医療などの政策医療充実に向けた体制整備

 青森県立中央病院(695床)は、県立の基幹病院として高度・特殊医療の提供、医療・医学教育の実施、地域医療の支援を理念に県の医療の向上に努めている。青森県はがん死亡率が全国ワースト1であるほか、心疾患、脳血管疾患による死亡率も長年、全国平均を大きく上回っており、自治体ぐるみで短命県の汚名を返上しようと取り組んできた。

 同病院では、現病院長の吉田茂昭氏が2007年に着任すると、政策医療の中核である4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)、5事業(救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)について基幹的な役割と責務を果たすため、診療組織体制を再編した。2008年4月に、がん診療センター、循環器センター、脳神経センターの3つのセンターを、翌々年1月には糖尿病センターを立ち上げ、4疾病への対応を強化した。また、5事業については、2004年に総合周産期母子医療センターを開設したほか、小児医療では専門分化に対応すべく、小児HCUから精神科の領域までを含め、医療提供体制の幅を拡充している。さらに、2011年5月には新救命救急センターの増改築工事が竣工し、災害医療の拠点機能の体制整備を図っている。

 特に青森県の救急医療については、地理的要因や交通アクセスの不備も相まって、地域の中核病院や救命救急センターまでの救急搬送に相当の時間を要するなど、救急医療体制の充実・強化が課題であった。このため、2009年3月に八戸市立市民病院を基地病院としてドクターヘリの運航を開始し、2011年4月からは県立中央病院および八戸市立市民病院の2病院による共同・分担運航を開始した。この共同・分担運航の開始により出動件数が増加したことや、東日本大震災のような大規模災害時における救急搬送体制の重要性を考慮し、2012年10月から、県立中央病院および八戸市立市民病院による2機体制運用を開始した。

青森県立中央病院を基地病院とするドクターヘリ(ユーロコプターEC135)
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青森県立中央病院医療情報部の三浦浩紀氏

「ドクターヘリの共同運航開始に伴い、救命救急部門の医師から、運航情報を記録するシステムを早急に開発してほしいと要請されたことが、当病院が業務で本格的にFileMakerを利用するようになったきっかけでした」。医療情報部主査の三浦浩紀氏は、FileMakerによる青森県立中央病院ドクターヘリ運用管理データベースシステム開発の経緯をこう話す。