車載機器では普段は動作しないが、センサーなどからのインプットがあって動作を開始する回路は多い。例えば、エンジン停止時に何らかの異常が発生した時点で、マイクロコントローラーが動作を開始し警報を出すシステムがある。この場合、異常発生を知らせるトリガーがあるまでは、電池の消費電流を最小限にしたい。そうでないと、常時流れる電流なのでバッテリー上がりの原因になりかねない。

 どういう回路を組めばいいいのか。例題を使いながら、考える。例題のケースでは、センサーと検知回路に100μAの電流を常時流す必要がある。また、この回路によるバッテリーの消費電流は50μAを超えられないとする。

自己消費電流を限りなく小さくする

 マイクロコントローラー用に100μAの待機電流を確保しようとすると、内部の消費電流が小さいLDOを使うのが一般的である。DC-DCコンバーターだと高速スイッチングを実現するために、たとえ出力電流が小さくても一定のドライブ電力が必要なためである。一方でLDOでは出力電流は入力電流より大きくとれない。このためバッテリーの消費電流は100μAより小さくできない。このようなジレンマを解決する新しいDC-DCコンバーターを開発した。

 自己消費電流が1.1μAと極めて小さなDC-DCコンバーター「MAX16956」(米Maxim Integrated社製)がそれである。このコンバーターの効率カーブを図1図2に示す。自己消費電流を小さくするためには、図1や図2のSKIPモードを使う。このモードでは出力電流を100μAとして入力電圧を12Vとすると、効率は68%である。

図1 3.3V出力の効率対負荷電流
図2 5V出力の効率対負荷電流

 入力電流=3.3Vx100uA/(12Vx0.68)=40μA

となり50uA以下にできる。なお、この例では、3.3Vのマイクロコントローラーを使用している。

SKIPモードでは負荷が小さくなるとスイッチング周波数が低くなる。このことでスイッチングのためのドライブ電流を減らして、軽負荷時の効率が上がる。こうして、無負荷時の入力電流(自己消費電流)を小さくできる。

 これまでもMaximの車載用DC-DCコンバーターの多くでSKIPモードを用いてきたが、MAX16956は消費電流を画期的に小さくした。5V出力時の効率カーブは図2にのようになる。効率は3.3V時に比較して10%高くなり、SKIPモード100μA出力時で78%となる。