「HOSPEX Japan 2014」(2014年11月12~14日、東京ビッグサイト)内で実施された「医工連携ワークショップ/第6回全国医工連携支援機関ネットワーク会議」。同ワークショップでは、「地域を超えた体制強化~他地域との連携・相互補完による医療機器産業の活性化に向けて~」とのテーマで、国内3地域の医工連携の取り組みに関する講演とパネル討論が行なわれた。

1県にこだわらない

 最初に登壇したのは、弘前大学 医学研究科COI研究推進機構 教授の村下公一氏。青森県庁、ソニー、東京大学などを渡り歩いた経歴を持つ同氏は現在、国が推進する革新的イノベーション創出のためのCOI(center of innovation)プログラムに従事。弘前大学のCOI研究推進機構は、本プログラムで設置された国内拠点の1つであり、各企業と連携して医療ビッグデータによって認知症疾患予防に関する取り組みなどを行なっている。

弘前大学の村下氏
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 青森県では2011年に「ライフイノベーションで健康で豊かな生活をする」という目的のもとに「青森ライフイノベーション戦略」を設立。その重点戦略分野として、医工連携事業が設定された。「青森県は日本一の短命県。かつ少子高齢化のスピードも非常に速いと言われている。医療分野で多くの課題を抱えた地域であることを逆手に、課題を解決しながら産業を作り出していこうというのが狙い。青森にもいろんな技術を持った企業がたくさんあり、弘前大学には医学部もある。青森が持つ強みを最大限に生かしながら産業を創出する取り組みを進めてきた」(村下氏)。

 青森の医工連携で心がけているのは、「予算規模は小さいものの、地域版として組み立てて練習してもらうイメージ」(村下氏)だという。地元企業を中心として、まずはトライするスキームを作り、いいものが出てきたら、もう一段階上を目指すという細かい展開を繰り返してきた。

 これまでの開発事例として紹介したのは、医療機器現場で利用するME機器用スタンド、術野撮影ポール、断線チェッカーなどのいわゆる周辺機器。「これら周辺機器も見逃せない分野。なぜなら医療関連の周辺機器は単価が高いから。しかも市場もそれなりにあり、きちんとビジネスになり得るため、そこに着実に挑戦していく。まだゆるやかだが、このような形で医療機器生産は増えてきている」(村下氏)。

 ただし、青森県だけではどうしても弱いため、秋田県、岩手県と連合して「北東北メディカルアレイ構想」を立ち上げ、日医工や日医協、日本医療機器テクノロジー協会とのパイプを作り、大手企業とのコンタクトも図った。その動きがさらに広がり、「東北地域医療機器産業支援ボード」なる東北全体の連携につながったという。現在では、新潟県、静岡県も巻き込んだ大きな共同体を形成している。

 この他、東京文京区・本郷に点在する医療機器メーカーを弘前大学病院に招待し、そこに地元企業を帯同させ、数名の有力な臨床医がニーズを直接プレゼンするといった取り組みについても言及した。これらが発展し、2014年8月には本郷の医療器械会館で、青森県の企業と本郷の医療機器メーカーによる連携推進・マッチング会が催されるまでに至った。

 村下氏はこれらの取り組みを踏まえ、次のように締めくくった。「青森は弱者の典型。1県にこだわると限界がある。しかし、足りないものを相互補完することで結果的に地元企業のビジネスになるのであれば、そういう方法を取るべきだと考える。日本の中だけで競うのではなく、グローバル競争の中でいかに戦い抜いて生き残っていくかが大事だ」。