全国各地にメガソーラー(大規模太陽光発電所)が続々と稼働を始めている。太陽光は「運転し始めたら、ほぼメンテナンス不要」と言われてきやものの、実際には予想以上に、破損や汚れ、草取り、そして、出力低下などの不具合が発生することも分かってきた。稼働から5~6年後のこれからトラブルが増えてくるとの見方も多い。ただ、メガソーラーの適切なO&M手法は確立しておらず、試行錯誤が続いているのが実態だ。この特集では、O&Mの分野で、先進的な技術や手法に取り組んでいる事業者やサイトを紹介する。
メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場
全国各地にメガソーラー(大規模太陽光発電所)が続々と稼働を始めている。太陽光は「運転し始めたら、ほぼメンテナンス不要」と言われてきやものの、実際には予想以上に、破損や汚れ、草取り、そして、出力低下などの不具合が発生することも分かってきた。稼働から5~6年後のこれからトラブルが増えてくるとの見方も多い。ただ、メガソーラーの適切なO&M手法は確立しておらず、試行錯誤が続いているのが実態だ。この特集では、O&Mの分野で、先進的な技術や手法に取り組んでいる事業者やサイトを紹介する。
目次
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発光でカラスに対抗、「包括委託」の草刈りが奏功、岡山の山あいの太陽光
牛舎に集まるカラスが26枚のパネルを割る
岡山県久米郡美咲町の山あいに、太陽光パネルの出力が約2.37MW、連系出力が1.98MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「PVNext EBH 美咲町発電所」がある。
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除雪すべきは地面より「パネルの上」、冬の発電量を増やす新・運用手法
サービス対価は、発電量の増加分に応じて決定
積雪地域に立地する太陽光発電所におけるO&M(運用・保守)として、新たな除雪手法が検討され始めている。太陽光パネルに積もった雪を、発電していない夜間に除き、翌朝からの発電ロスを回避しようという手法である。除雪費用を上回る発電量の増加が見込める場合があり、発電事業者と除雪事業者の双方に利点がある。
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発電中の太陽光設備を、安全・正確に絶縁診断
遮光や安全装置の取り外し不要、不良箇所まで把握
太陽光発電所の不良診断には、すこしコツの要る点検がある。それは、太陽光パネルから接続箱、パワーコンディショナー(PCS)までの間の直流回路における絶縁状態の点検である。絶縁されているべき場所が、正しく絶縁されているかどうかを調べる。
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「ヤギ除草」でCO2と経費を削減、山梨県が7年間で実証
2頭のヤギをメガソーラー周辺の法面に導入
甲府市下向山町にある「米倉山太陽光発電所」は、JR甲府駅からクルマで30分ほどの丘陵にある出力10MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)だ。山梨県企業局が、東京電力との共同事業として県有地に建設した。2012年1月に運転を開始した当時、国内最大級の規模を誇り、メガソーラー時代の先駆けとなった。
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急増する太陽光パネル洗浄の需要、ケルヒャーの部材が障壁を解消
円盤状のブラシで誰でも簡単に
太陽光発電所のO&M(運用・保守)で、最近、需要が増えているのが、太陽光パネルの洗浄である。土埃などが太陽光パネルに積もり続けると、発電量が減る。この発電損失を解消し、本来得られる発電量に近づける目的で実施される。
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バイパスダイオードの故障が約2秒でわかる、太陽光向け検査装置
遮光も不要、日中に検査可能な利点も
稼動を始めた太陽光発電所において、定期的に点検しておくことが望ましい太陽光パネルの不具合の一つに、バイパスダイオードの故障がある。
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今冬の大雪で、太陽光向け除雪サービスに脚光、損壊防止も目的に
北陸では常駐で除雪する案件も
2017~18年にかけての冬は、島根県から青森県までの日本海側などで、記録的な降雪が相次いだ。道路や鉄道で通行が長時間停止したほか、交通の遮断によって陸の孤島となった地域では、食糧や生活物資の入手が長期にわたって困難となった。
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4本のストリングの発電状況を比べ、不具合パネルまで特定
低圧の配線不具合機器を応用し、海外にも拡販
メガソーラーでは、出力1MWで約4000枚、同3MW以上では1万枚以上の太陽光パネルを設置することになる。そして、稼動から時間が経過するほど、パネルの不具合や劣化などが一定の割合で発生する。
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パネル単位で不具合を特定、ICや通信の検出手法を応用
福岡のベンチャーが製品化、台湾や中国にも拡大
メガソーラー(大規模太陽光発電所)では、出力1MWで約4000枚、同3MW以上になると1万枚以上の太陽光パネルが設置される。稼動から時間が経つほど、不具合や劣化などが一定の割合で発生する。
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500羽のカラスをタカで追い払う、鷹匠がメガソーラーで大活躍
「鳥取・米子メガソーラー発電所」は、鳥取県米子市街からクルマで30分ほどの丘陵にある。元ゴルフ場跡地を活用した出力約30MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)だ。2016年9月に着工後、順調に工事が進み、2018年4月2日に商業運転を開始した。
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影による発電量の低下を最小化、パネル単位の制御・監視システムの効果
米Tigo Energyのマキシマイザー付きパネルを採用
大阪府河南町の山あいに、連系出力50kW未満となる事業用の低圧太陽光発電所が2カ所、並んでいる。周囲には、連系出力2MW未満となる高圧連系のメガソーラーも4カ所ある。
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九州の中小企業が太陽光のO&Mで“団結”、地域の担い手に
メンテナンス手法や作業の標準化も目指す
太陽光発電所が固定価格買取制度(FIT)によって大量に導入され、買取期間が終わった後、地域に根付く安い電源として、電力の供給を続け、主力電源の一つとなるには、保守やメンテナンスの担い手が地域に必要になる。日本の太陽光発電産業で、重要性が指摘されていながらなかなか追いついていない部分ともいえる。九州の…
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カラス対策にフラッシュ光の「新兵器」、メガソーラーでも採用
ランダムに点滅させ、カラスの嫌がる光に
宮崎県日向市と東臼杵郡門川町にまたがる丘陵に、出力約24.5MWのメガソーラー「日向日知屋太陽光発電所」がある。総合建設会社(ゼネコン)大手の大林組が開発し、特定目的会社(SPC)のOCE日向メガソーラーが発電事業者となる。このメガソーラーでは、2つのカラス対策が導入されている。
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首を傾けギリギリまでゴーカートのような草刈機で除草、みやま市のメガソーラー
架台や基礎、配線の工夫でアレイ下も効率的に草刈り
メガソーラー(大規模太陽光発電所)の運用において、雑草の管理は、長期にわたる発電期間中、継続してつきまとう課題となる。立地する場所ごとに雑草の育成状況や、取りうる対策は異なり、現在のところ、万能な解決策は見当たらない。
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直流・高圧の電力線でデータを送る、太陽光ストリング監視の現状
住友電気工業が事業化、国内50カ所・約350MWで採用
三重県松阪市にある工業団地の隣接地に、合計出力約15MWのメガソーラー「松阪山室メガソーラー発電所」がある。三重交通グループの三交不動産(三重県津市)が開発・運営しており、電力線通信(PLC)を応用したストリング監視システムを採用している。
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「通信線も電力線も不要」、無線ストリング監視の実際
太陽誘電が製品化、国内67カ所に供給
茨城県南東部に広がる霞ケ浦。その北側のかすみがうら市に出力約1.7MWのメガソーラー「パラカかすみがうら太陽光発電所」がある。2015年12月に稼働を開始した。このメガソーラーでは、無線通信と太陽光発電電力を使い、外部の電源や通信線の不要なストリング監視システムを導入した。
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「乗用型草刈機+除草剤」で効果的に雑草管理、コストは半額に
出力500kWを約18万円、パネルの点検まで
太陽光発電所は、固定価格買取制度(FIT)に基づく20年間、さらに、それ以上の長期間、運用することも想定されている。運用面で、多くの発電事業者やO&M(運用・保守)事業者を悩ませている課題が雑草対策である。
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七ツ島70MWのメガソーラー、稼働から3年、火山灰の影響は?
1386本の避雷針が発電所を守る
鹿児島市七ツ島は、鹿児島県南部の臨海部に位置する。かつては大小7つの島があったが、1970年代に工業用地として、約205haの区域が埋め立てられた。出力70MWの「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」は、この埋立地の半分以上となる約127haに、約29万枚の太陽光パネルを設置した(図1)。IHIが造船所…
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世界初、現地で工場出荷時の性能評価、トラックをパネルの移動式ラボに
パネルメーカーに提示できる品質のデータを現地で取得
太陽光発電所が長期間、想定した発電量を維持するためには、設置後の太陽光パネルがメーカーの保証した出力性能を保っていることが前提となる。O&M(運用・保守)のなかで、パネルの出力性能の変化をいかに把握するかが、ポイントになる。
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パネルに塗るだけで発電量が3%増加、FIT初期の案件に効果
洗浄するように塗布でき、増収分で2年以内の回収も可能
稼働した太陽光発電所では、パネルをはじめとする設備の経年劣化などを抑え、発電量をいかに低下させないように運営するかが課題となる。まして、発電量を「増やす」ことは、通常のO&M(運営・保守)では、考えられない。