都市部の狭い敷地でも、日照条件にかかわらず建物単体で年間エネルギー収支をゼロとする──。大成建設が「都市型ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」と定義する世界初の建物が完成した。技術センター(横浜市)に新設した「ZEB実証棟」だ。同社はコスト削減を進め、2020年までの実用化を目指す。

大成建設ZEB実証棟の外観。手前側の面には約半分の面積を有機薄膜太陽電池外壁ユニットが占める(写真:大成建設)
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ZEB実証棟の年間エネルギー収支計画。75%の省エネルギーと25%の創エネルギーでZEBを実現する計画だ(資料:大成建設)
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 大成建設は都市型ZEBを、日照条件に優れた郊外型や、広い敷地を活用し駐車場などの建物外でつくり出したエネルギーを取り込むケースとは区別して定義している。日本国内では都市部でのエネルギー消費量が多いことから、狭小な敷地でもZEBを達成できる技術が求められるとして、技術開発を続けてきた。

 ZEB実証棟は鉄筋コンクリート造の地上3階建て。延べ面積は1277.32m2だ。東京都のオフィスビルの平均値(2010年)と比較して、年間消費エネルギーを75%削減。25%を太陽光発電などで生成する。季節によって、創エネルギー分が上回る場合は周囲の建物にエネルギーを分け、創エネだけでは足りない場合は買電する。

 同社によれば、エネルギー量の削減幅である75%のうち40%は既存技術を組み合わせて実現。残りの35%は、ZEB実証棟で初めて採用した4つの技術で削減した。

ZEB実証棟の断面イメージ。複数の新技術を採用してZEBを実現する(資料:大成建設)
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