このシリーズでは、中部電気保安協会の本店 保安部 太陽光プロジェクトチームによる、太陽光発電システムのトラブル事例や、それらのトラブルへの対応策、所属する電気主任技術者にどのように助言しているのかについて紹介する。同チームがまとめたトラブル事例集を基に、同チームの寄稿によって構成している。

 第19回で紹介したように、昇圧連系設備に設置する地絡過電圧継電器(OVGR)は、系統側で地絡故障(アースへのショート)が発生した場合、故障した場所の探査や、故障の除去作業にあたる作業員の感電を防止するために、それを検知し、パワーコンディショナー(PCS)を停止させ、太陽光発電所と系統の受送電を停止させる役割を担います。

 OVGRは、昇圧連系設備内に設置され、OVGRの動作出力接点とPCSの外部入力信号端子を電線で接続します。太陽光発電所に複数台のPCSが設置されている場合、この接続方法を、取扱説明書などでよく確認しておく必要があります。

 今回は、PCSメーカーが指示している方法とは、異なる方法でOVGRの動作出力接点とPCSの外部入力信号端子を接続したために、誤動作した事例を紹介します。

 PCSを3台導入した出力1.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)において、稼働前に実施する竣工検査を担当した際、OVGRの動作出力接点と、それぞれのPCSの外部入力信号端子との接続が、渡り配線となっていました(図1)。

図1●OVGRの動作出力接点と、それぞれのPCSの外部入力信号端子との接続が渡り配線に
(出所:中部電気保安協会)
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 PCSの外部入力信号の渡り配線は、多くの太陽光発電所で見かけるもので、何の疑いもなく、竣工検査を終了しました。

 ところが、後日、昇圧連系設備で受電し、送電網と連系させた時に、3台のPCSのうち、1台がOVGRの動作を示すエラーコードを表示して停止しました。

 しかし、昇圧連系設備に設置されているOVGRは、動作していません。そこで、もう一度、配線を確認しましたが、異常は見つかりません。