2014年10月17~19日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された「第37回 日本高血圧学会総会」では、「正常な血圧って何だろう」と題する市民公開講座(主催:第37回 日本高血圧学会総会、メタボリックシンドローム撲滅委員会)が企画された。日本高血圧学会(JSH)が2014年4月に発行した「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)の作成委員長を務めた札幌医科大学学長・理事長の島本和明氏と、特定保健指導分野のエキスパート2人の計3人が登壇。テーマは、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と高血圧、そして認知症の深いかかわりだ。

登壇した島本氏
[画像のクリックで拡大表示]

 開会の挨拶とともに「高血圧治療ガイドライン2014と生活習慣病」と題して講演した島本氏はまず、日本における高血圧患者の多さを訴えた。日本では総人口の1/3を超える約4300万人が高血圧とされ、50歳を超えると約50%、80歳を超えると実に約80%が高血圧を患うという。「最も患者数の多い生活習慣病であり、脳卒中や心疾患、腎臓病の要因となる。一方、自己管理できる点ががんとは異なり、身近に感じ、治ることを実感できる疾患でもある」(島本氏)。言い換えれば、高血圧の治療とは、将来の疾患リスクを減らすことだ。

 高血圧の要因として、従来は塩分の過剰摂取が強調されてきたが、「現在では肥満が重要な因子と見なされるようになってきた。“メタボ時代の高血圧”では、減塩とともに肥満解消が最重要テーマだ」と島本氏は話す。「人は“血管とともに”老いる。寝たきりなど、健康寿命に最も密接にかかわるのは、がんではなく動脈硬化。その要因には、高コレステロール血症や喫煙に加え、高血圧とメタボリックシンドロームがあるが、現在ではメタボリックシンドロームの中に高血圧が含まれると考えた方がよいくらいだ」(同氏)。