メガソーラービジネス

<第25回>「『接続保留』による混乱は風評被害」。回答再開後を楽観する3つの理由。太陽光発電協会(JPEA)・鈴木事務局長

メガソーラービジネス・インタビュー

2014/10/22 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所
太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長(出所:日経BP)

5電力会社(九州、四国、東北、北海道、沖縄)が、再生可能エネルギーの接続申し込みへの回答を保留すると公表した。経産省はこれを受け、固定価格買取制度(FIT)の見直しを検討してきた新エネルギー小委員会の下に、系統ワーキンググループ(WG)を設置し、接続可能量の検証に着手した。同WGのオブザーバーでもある太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長に、「接続保留」問題の背景と今後について聞いた。

――再生可能エネルギーの接続申し込みへの回答を保留するという電力会社の措置が、再エネ事業者間で混乱を引き起こしています。太陽光発電を建設している事業者はもとより、すでに設備が稼働して売電している事業者も含め、将来への不安が広がっています。

鈴木 「接続保留」問題では、太陽光発電協会(JPEA)にも問い合わせが相次いでいます。再エネに関係する業界に影響が大きかったのは、唐突に「保留」という措置が発表されたことが発端です。ただ、ここまで混乱が広がり、事業者に不安感が高まった要因のかなりの部分は、不正確な報道内容にもあると思います。

 今回の措置は、系統接続の申し込みへの回答を数カ月間、「保留」することですが、新聞などの見出しや解説には、接続の「停止」や「中断」「凍結」などの文字が躍っています。中には「買取停止」という言い方までありました。

 JPEAにもテレビ局から、「再エネへの参入凍結についてどう思われますか」との質問がありました。「そういう事実はないはず」と応えましたが、「テレビ局の記者は、新聞にそういう報道がありましたが…」ということでした。このテレビ局は、経産省への取材でも「事実無根」と一蹴され、ニュースの企画方針を変えざるを得なくなったようです。

 「保留」という措置の影響はもちろん小さくありませんが、数カ月後には回答が再開することが前提です。接続申し込みへの回答が遅れていること自体は珍しくなく、「保留」発表前から、従来2~3カ月で回答があったものが、半年近くたっても回答がないケースが増えていました。こうした事務手続き上の「遅れ」の問題と、再エネ接続の「停止」や「中断」「凍結」とは別次元の問題です。まして、現在、稼働中の再エネ設備の電力買い取りに影響するものではまったくありません。いまの混乱は、福島第一原発事故の後に起きた風評被害に近い側面があります。

九電にとっても苦渋の選択

――固定価格買取制度(FIT)の今後の見直しを巡る報道にも、新エネルギー小委員会での討議内容を超えた憶測記事が目立ちます。

太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長(出所:日経BP)

鈴木 新エネルギー小委員会の委員が個人的に、非公式の場で、見直しの持論を記者などに語ることはあり得ます。そのコメントを報道する場合、本来であれば、「~という意見がある」とすべきです。しかし、なかには、「委員会で検討している」という表現になり、記事によっては、「経産省が検討している」という言い方にまで飛躍している例さえ見られます。

 こうした事実と異なる報道が続いているために、最近では、一部の媒体に関し、報道内容への不信感が広がり、最初から記事内容を話半分に捉える人も増えています。JPEAへの問い合わせが増えているのは、こうした背景もあります。

――マスコミの報道姿勢に混乱を助長する面があったとしても、九州電力による接続申し込みへの「回答保留」が、再エネ事業者から見て唐突だったことも否定できません。そもそも、法律では、「保留」という措置を想定していません。

鈴木 まさにその通りで、新エネルギー小委員会の場でも、弁護士の資格を持つ委員が、「保留」の法的な問題点に言及しています。ただ、「数カ月間、保留」という措置については、九電にとっても苦渋の決断だったことは間違いありません。関係者から聞いたところでは、当初、九電は「1年程度の受付停止」を、経産省に打診したようですが、それでは世間の理解が得られないとして差し戻され、何度かやりとりするなかで「数カ月間、回答を保留する」という形で落ち着いたようです。

 九電が当初、「受付停止」にしたかったのは、接続申し込みが殺到し、現場がそれを処理しきれなくなっていたからです。受け付けてしまえばまた業務量が増えます。各エリアで接続申請を審査する担当者は、積み上がった接続申請の書類を前に、精査している時間的な余裕がなく、「本当に全部つなげられるのか」と不安になり、「一度、時間をかけて評価すべき」との声が出てきたようです。

 九電本社が各エリアでの接続申請を足し合わせると、電力需要の低い時期の負荷を大きく上回ることが分かり、現場の声も踏まえ、いったん時間をかけて接続可能量を評価することを決断したようです。2013年度末に設備認定が急増してから、9月末の保留の発表に踏み切るまでに半年を要したのは、九電本社が現場の実態を把握するまでに時間がかかったこと、そして九電本社と経産省の調整があり、それが時間的なロスになったようです。

 結局、九電が「保留」に踏み切ったのは、通常の業務の流れでは急増する接続申請に対応できなくなったことが原因です。ただ、2014年3月に設備認定がここまで殺到するとはだれも予想しませんでした。九電の対応を責められない面もあります。

3つの理由で、接続問題を楽観視

――数カ月後に、「保留」が終わり、回答が再開された場合、どのような状況が予想されますか?

鈴木 接続保留が問題になっている5電力のなかで、九州電力とそれ以外では、状況が大きく異なります。まず、北海道電力と沖縄電力は、九電の保留問題の前からすでに「接続限界に達した」と公表して経産省もそれを認めました。両電力会社とも電力系統の規模が比較的小さく、他電力との地域間連系線が細い(沖縄電力はない)ことなどが背景にあります。北電は住宅用を除き、沖縄電力はすべての容量について一定の条件付きでしか、新規の接続協議に応じていません。

 また、四国電力と東北電力は、九電ほど切迫した状況ではなく、やや便乗的に「保留」に踏み切った面もあるとみています。とはいえ、対応が後手になって批判された九電を「他山の石」として早めに手を打った、という意味では、理解できます。

 では、最も深刻な九電について、保留が解除された後にどのような状況になるのか。「接続可能量」が技術的にどのくらいなのかは、新設された「系統WG」で検証されていくでしょう。JPEAでは、技術的な接続可能量の論議とは異なる3つの視点から、いま直ちに「接続停止」に踏み切る必要はないと見ています。

 まず、1つ目は、九電管内の太陽光の設備認定量(2014年6月末時点で約1790万kW)が低負荷期の電力需要(約800万kW)を上回ったと言っても、設備認定のすべてが実際に稼働することはありません。設備認定された中には、買取価格の権利確保だけを目的にしたものも含まれており、こうした案件は、今後、「取消」や「断念」に至るものも相当数、あると見ています。

 JPEAでは、こうした稼働に至らない案件を除いた容量を「実質の設置想定量」として、全国ベースの数値を今年8月に推定しました(図1)。つまり、稼働する可能性の高い“真水”です。2012年度の太陽光の設備認定量(約20GW)のうち「真水」は約14GW、2013年度は同45.6GWのうち真水は約31.6GWに減ります。この「真水」の算定には、系統制約で実現しない分も含むので、実際の稼働量はさらに減ります。現在、JPEAでは、九電管内に絞った真水の推定値を公表する準備を進めています。

図1●設備認定量と実質設置想定量試算の推移(単年度・累計)(出所:JPEA)
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パワコンの直接制御など、新技術に期待

鈴木 2つ目は、時間軸の視点です。設備認定量の真水分が、一斉に建設され、稼働することはありません。国内での太陽光発電設備の施工能力や設備の供給力には限界があるため、年間に8GW程度ずつ、今後、3~4年に均されて導入が進むことになると見ています。つまり、実際には3年ぐらいかけて、系統連系の新ルールや系統安定化のための新技術などを検討して導入する余裕があります。

 発電電力量に占める再エネ導入量(水力を除く)では、ドイツやスペインの20%以上に対し、日本ではわずか2.2%程度に過ぎない段階で、すでに接続問題の議論が起きています。その背景にはもちろん電力系統の構造の違いもありますが、欧州では系統制御に新技術を導入しています。代表的なものが、再エネ発電所の直接制御です。電力会社の中央給電指令所が、メガソーラー(大規模太陽光発電所)などのパワーコンディショナー(PCS)にアクセスし、力率や出力を需給調整のためにリアルタイムで直接、制御できます。

――実際、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)など、海外市場で実績のあるPCSメーカーは、国内に設置する場合にもすでに外部から遠隔制御が可能な機能を備えている機種も設置していると聞きます。

太陽光発電協会(JPEA)の鈴木伸一事務局長(出所:日経BP)

鈴木 こうした遠隔制御の技術は、PCS側にあらかじめ受け口さえ用意しておけば、短期間で対応が可能です。仮に真水分が接続可能量に近いとしても、実際にすべてが稼働するまでに3年程度の余裕があれば、こうした新技術を導入することも十分に可能です。

 3つ目は、月別、日別、時間帯別の視点です。時間帯別に細かく電源構成を分析していった場合、仮に真水分のすべてが稼働しても、実際に出力抑制が必要になる日数は、30日以内に収まる可能性もあります。現在でも、制度上、電力会社が再エネ事業者に補償せずに30日まで出力抑制できる「30日ルール」があります。再エネ事業者は、これを前提に事業性を確保します。ただ、「接続上限」を超えた場合、電力会社は30日を超えても無償で出力抑制することを条件に接続する仕組みが認められ、北電管内では実際に導入しています。

 時間帯別に精査して、30日以内に収まる可能性が高ければ、発電事業者の事業性を損ねずに導入できることになります。

 こうした3つの視点を考慮すれば、いまこの時期に急いで「接続停止」しなくても、容量的にも時間的にも、まだ余裕があります。かりに今、拙速に接続を停止した場合、3~4年後に、「まだまだ再エネの接続枠はガラガラ」で、「数年前の騒ぎはなんだったのか」という事態になることも、十分にあり得ると思っています。

2015年度以降は、FITに頼らない

――FITは、当初3年間は事業者の利潤に特に配慮する、いわゆるプレミア期間とされています。制度の見直しも含め、4年目以降をどのように見ていますか。

鈴木 JPEAの予測では、プレミアム期間の最後の年である2014年度に7.8GWの設備認定があり、その後、2015年度以降は、毎年2.5GW程度の認定に落ち着くと見ています(図1)。年間の設置量は、2020年までは6~8GW、2022年以降は、3GW前後で推移すると見込んでいます(図2)。2015年度以降は、基本的にはFITに頼らなくても、自家消費型を含め、自立的に導入が進む“巡航速度”に入ります。

図2●2030年までの太陽光発電設備の設置量(出所:JPEA)
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 4年目以降の巡航速度に向け、太陽光発電業界が自助努力によって、一層のコストダウンを次のエンジンとして、持続的に成長しなくてなりません。仮にFITの大幅な見直しがあっても、国会での法改正になれば、適用されるのは2016年度からになります。もともと2015年度以降は、「FITに頼らない」という覚悟を前提にしているので、大勢には影響がないとも言えます。

――ただ、太陽光に偏った普及を批判する人は、非住宅用の大規模太陽光の買い取りを停止したり、上限を設けたりすべきとの意見もあります。

鈴木 大規模太陽光の買い取りに上限を設けるという議論は、電源構成のなかで、再エネがどのくらいの割合を担うことを目標にするのか、というベストミックスの議論と連動します。現在のエネルギー基本計画では、「再エネの電源構成を21%以上」と記載しています。かりにこの目標が30%になれば、いまの設備認定量がすべて稼働しても10ポイント近く不足します。太陽光以外の再エネを底上げするにしても、すべての再エネを総動員しないと達成できないでしょう。そうなれば、相対的に立地制約の少ないメガソーラーに上限を設ける、という論拠は見出せないはずです。