基幹・部門システムの機能を補完するFileMakerソリューション

 FileMakerアプリケーションは、各部門の業務支援のため、単独もしくは部門システムや電子カルテと連携する形で、数多く開発されてきた。HOPE EGMAIN-GXの導入により電子カルテシステムに移行したものもあるが、現在でも約50以上のFileMakerソリューションが稼動している。

 FileMakerを利用するのは、現場のニーズに対応できるソリューションを医療従事者が自ら開発できるため。部門の医師や技師が独自に作成しているほか、情報企画課が開発やアプリケーション作成を支援する体制もとっている。FileMakerアプリケーションの開発支援や全組織的な管理を担当しているのが、中央放射線科の高畑氏と、情報企画課に常駐しているヒューマックス(本社:広島市)の桑野幹典氏、高田光一郎氏だ。

ヒューマックス システム事業部の桑野幹典氏(医療情報技師)
ヒューマックス システム事業部の高田光一郎氏(医療情報技師)

 「FileMakerシステムと基幹システムの連携は、電子カルテのデータウエアハウス(問い合わせ・分析用データベース)からODBC(Open Database Connectivity)経由で患者基本情報をFileMakerに取り込む方式を採用しています。接続のためのスクリプト作成やFileMakerシステム間のテーブル連携などの作業は、ヒューマックスが担当しています」(ヒューマックスの桑野幹典氏)。

 広域災害用システムもFileMakerで構築されたアプリケーションの1つだ。1997年に災害拠点病院に指定されたのをきっかけに、災害時に搬送されてきた患者のトリアージや処置内容、搬送先などを一元的に管理し、共有するため開発された。「従来、救急搬送されてきた負傷者は、受け入れ順にホワイトボードに書き出し、後でリスト化していましたが、傷病者全体の管理ができず、医療救護活動に支障をきたす恐れがありました。また、行方不明者の家族からの安否問い合わせにも速やかに対応できませんでした。

 このため、災害対策本部や個々のトリアージポスト、各トリアージエリアなどで傷病者情報を共有しながら円滑な医療活動ができ、また家族の問合せにも迅速に対応できるよう、災害訓練の実施を機にFileMakerアプリケーションを開発しました」(高畑氏)という。