2014年7月16~18日に東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ2014」(関連記事リンクはこちら)。本レポートでは、「医療情報のIT化」の視点から展示の様子を紹介していこう。

 ここ数年、大きく進んできた医療情報のIT化。今回のホスピタルショウでは、(1)医療情報のIT化をさらに加速させる取り組み、(2)医療情報のIT化による課題を解決する取り組み、の両面が見て取れた。

門前薬局が街から消える?

図1 パナソニック ヘルスケアが展示した「ヘルスケア手帳」のアプリ画面
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 (1)に関する展示の一つが、パナソニック ヘルスケアが2014年7月15日に発売した薬局向けサービス「ヘルスケア手帳」である(図1)。処方箋の撮影から送付、受付、調剤完了の確認までの一連の流れを、スマートフォンアプリで実現するもの。このサービスを導入した薬局の利用者は、調剤完了呼出まで薬局に行く必要がなくなり、時間を有効利用できるようになる。薬局にとっては、地理的に離れた医療機関からの処方箋獲得のチャンスが広がる。

 薬局は従来、医療機関に近い場所に所在し、その医療機関の処方箋を収益の柱にすることが多かった。いわゆる「門前薬局」である。ヘルスケア手帳はこうした在り方を変え、「薬局ビジネスにパラダイムシフトをもたらす」(パナソニック ヘルスケア)。薬局の所在地ではなく、いかに調剤をスマート化するかを競いどころに変えるからだ。同社は、既に全国15店舗で今回のサービスの実証実験を実施。一般利用者にとって「サービスを導入した薬局に乗り換える動機になった」割合が55%、薬局にとって「顧客の流出防止につながったと実感した」割合が59%に達したという。

 ここにきて、ドラッグストアが調剤薬局の機能を強化していることなどもあり、従来からの調剤薬局にとって「経営環境は厳しさを増している」(パナソニック ヘルスケア)。そこで、調剤薬局に対し、ヘルスケア手帳を競争力強化のツールとして導入することを勧める考え。先行導入事例として、調剤薬局大手の総合メディカルが2014年度中に約500店舗、2015年度には全店舗に導入する計画である。