イラスト:浅賀行雄

 樹脂成形品は、日本メーカーが中国で調達する部品の中で特に需要が多いものの一つです。理由はやはり、金型のコストが安くなる可能性があるから。ものによって差はありますが、安いものでは日本で調達する1/3程度のものもあります。

 半面、中国の金型メーカーは加工精度の甘さが目立ちます。安易に発注して、後にトラブルとなる例が後を絶たないのです。つい最近、私も金型の調達で手を焼きました。

 私が設計したのは、液体状の薬品を供給する装置。安価な製品であることから、この装置のうち薬品を蓄えるタンクと供給口を兼ねた樹脂成形品を中国メーカーに発注することにしました。

 選定したのは香港系のA社。工場を設立してから10年ほどの実績を持つ金型メーカーでした。早速、私はこの樹脂成形品の図面を送るとともに、A社の担当者に金型製作について簡単な説明を行いました。

 それから1カ月後、A社から試作品が送られてきました。ところが、これを受け入れ検査課に持ち込んで検査したところ、判定は「不合格」。図面とは異なる多くの寸法があったからです。慌てた受け入れ検査課の担当者は、間違っている寸法の個所から特に重要なものを選び出し、該当部分の金型を修正するようにA社の担当者に指示を出しました。