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著者の中原氏

 本連載の第3回~第5回では、市場ステージ別に見たメーカーとしての打ち手について取り上げています。第4回となる今回は、成長期市場に異業種から後発参入する/した企業に焦点を当て、その課題と事業拡大策について考えていきます。

異業種メーカーが医療分野に参入する意義

 異業種メーカーが医療分野への参入を検討する理由として次の3つが挙げられます。

(1)既存事業の成長が鈍化する中、伸びるとされる医療市場に参入したい
(2)既存事業はうまく行っているが、現在の一本足打法から脱却し新たな事業の柱の創出を目指したい
(3)景気変動に左右されずに安定的に収益が獲得できる事業を自社の事業ポートフォリオに組み込みたい

 確かに、医療分野は成長市場であり、景気変動に左右されずに収益を得ることができるという点で魅力的な市場です。しかし、後発参入となる異業種メーカーにとっての事業機会はあるのでしょうか。

 近年の医療分野のトレンドをみると、医療分野は異分野との業際/融合が進み、新しい成長機会が生まれています。例えば、下の図は医療関連製品を製品の種類(縦軸)と業界(横軸)で分けたものです。

図1 異業種メーカーにとっての事業機会の広がり(図:野村総合研究所)
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 これまでは医療分野の中でも製品の種類や分野で閉じた狭いセグメント内で製品開発が行われていましたが、ITの発達やシステムとしての製品開発が盛んになり、医療分野内(縦軸)での融合が進んできました。さらに、アンメットメディカルニーズが注目されるようになり、医療分野の既存技術だけでなく新素材や新技術を取り入れた製品開発が試みられ、医療分野と異分野(横軸)の業際/融合が進展しています。この領域に異業種メーカーにとっての事業機会が生まれ、実際に異業種融合により新しい付加価値を提供する製品開発が行われています。