筆者は、見学・調査のため過去四半世紀に福島第一原発を6回訪問している。今回は、これまでにない特別なものが感じられた。事故後に建設された各種施設や建設中の施設によって敷地内の光景は事故前から一変しており、まるで戦場のようだった。関係者の動きも機敏に感じられた。

 敷地・施設内には1日に総計3000~5000人の従事者が出入りしており、厳密な出入管理が行われている。入退域管理施設では、効率的に従事者の認証検査や汚染検査が進められており、現場の品質管理も行き届いていた。担当者の印象も良く、全員が事故収拾と廃炉に向けて一生懸命に業務に邁進していると見受けられた。

 ALPSの汚染水漏洩など事故収拾におけるトラブルの原因の多くは、時間をかけて十分に検討する余裕もなく同時に多種類の施設を多く作り過ぎたことにあると考えられる。事故への緊急対応として実績のない施設が建設・運転され、故障停止や漏水がくり返されたからだ。しかし、運転経験を積むにつれてこれらのトラブルは確実に克服できるだろう。

 一部マスコミには「事故は収束に向かっていない」との論調もあるが、筆者はそうは思わない。特に4号機の使用済み燃料移送作業は、筆者の想像以上に時間をかけて慎重に進められていた。収束に向かっていないと考えるのは、現場を見ていないためである。部分的なささいな問題はあるにしろ、基本的に「under control」にあるというのが筆者の意見だ。