救急患者を搬送する際、受け入れ先の医療機関がなかなか見つからず、「たらい回し」にされた挙句に患者が死亡する――。しばしばメディアをにぎわせるそんな悲劇をなくそうとする取り組みを、バーズ・ビューと三重県が共同で2014年9月に始める。救急患者と受け入れ先の医療機関を最適にマッチングするバーズ・ビューのクラウドサービス「e-MATCH」を、三重県が県内3市で試験導入し、その効果を検証する。

 2014年7月18日に東京都内で開催された「AWS(Amazon Web Services) Summit Tokyo 2014」(主催:Amazon Web Services社)では、バーズ・ビュー 取締役の夏井淳一氏と、三重県における救急医療を牽引する今井寛氏(三重大学医学部附属病院 救命救急センター センター長・教授)が登壇。それぞれの立場から、クラウドを使った救急医療の展望と期待を語った。

救急医療に“鳥の目”を持ち込む

 夏井氏はまず、救急医療をめぐる問題が「ここ30年間、ずっと解決されずにきた」と指摘した。具体的には、救急車と患者、そして受け入れ先の需給バランスが崩れていることだ。結果として、救急車が患者のもとへ到着するまでの時間や、患者を医療機関へ運ぶまでの時間は増加傾向が続いているという。「患者のもとに到着したにもかかわらず、受け入れ先が見つからないために救急車が発車できないという事態がしばしば生じている」(同氏)。

現在の救急医療の問題点を指摘するバーズ・ビュー 取締役の夏井淳一氏
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 こうした事態を避けようと、救急車に携帯型の情報端末を持ち込む例は増えているものの、根本的な解決にはつながっていないという。具体的には、救急車と医療機関の情報共有にリアルタイム性がないこと、地理的な広がりがなく局所的に使っていること、端末が専用のもので汎用性に乏しいこと、などが課題だ。これまでの救急医療は、地域全体の患者や救急車、受け入れ先の分布や状況を俯瞰した「“鳥の目”を欠いていた」と夏井氏は指摘する。

 バーズ・ビューが提供するクラウドサービス「e-MATCH」は、救急医療のエキスパートとして活躍した医師の青木則明氏(故人)のコンセプトを具現化したもので、救急医療に“鳥の目”を持ち込むことを狙う。Amazon Web Services社のクラウド基盤を使い、救急車に乗り込む救急隊と、急性期医療を担う医療機関の間でリアルタイムに情報を共有できるようにする。