「東北医療情報ハイウェイ計画」――。5つの医療情報基盤を同時並行で整備し、巨大な医療情報を起点とした情報サークルを形成する仕組みの構築が進んでいる。

 東北大学大学院医学系研究科教授の中谷純氏は、2014年6月5~7日に岡山市(岡山県)で開催された「第18回日本医療情報学会春季学術大会」(主催:日本医療情報学会)の特別講演に登壇。「東北医療情報ハイウェイ計画」と題して講演し、巨大な医療情報の生成や最適活用の仕組みにより、地域医療連携の礎を作るとともに最先端研究拠点の下地の形成を目指すと述べた。

5つの医療情報基盤を同時並行で整備

東北大学大学院医学系研究科教授の中谷純氏
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 宮城県では東日本大震災の被災を契機として、震災前よりもよい社会を目指した“復興”を実現するために、医療情報に関連した5つの社会情報基盤構築整備プロジェクトを並行して進めている。具体的には、次の5つである。

(1)医師会を中心とした地域医療連携基盤である「みやぎ医療福祉情報連携基盤」(MMWIN)
(2)未来型医療確立を目的とした研究情報基盤の「東北メディカル・メガバンク情報基盤」
(3)東北大学病院の医療情報ネットワーク「東北大学病院情報基盤」
(4)東北大学医学部の研究用情報基盤「東北大学大学院医学系研究情報基盤」
(5)基礎研究を臨床現場に橋渡しする「臨床試験中核病院TR(トランスレーショナルリサーチ)医療情報基盤」

 このうち(1)のMMWINでは地域の医療および介護連携による臨床情報、(3)の東北大病院情報基盤では院内だけでなく東北地方全域の臨床情報が蓄積される。こうした臨床情報は情報パイプラインで匿名化などに対応する統制が行われ、研究サイドに渡される。

 その研究機関の情報基盤が、前向きコホートと全ゲノムシーケンスを組み合わせた研究を行う(2)の東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)の情報基盤であり、(4)の東北大学大学院医学系研究情報基盤だ。そこでの研究成果である未来型医療情報や多視点の最先端医療情報は、(5)のような還元パイプラインを通じて臨床試験を実施したうえで東北大病院や地域医療介護における診療に還元されることになる。