和歌山県の最北に位置し、北は大阪府、東は奈良県と接する橋本市。大阪中心部の難波まで南海高野山線で約50分という距離で、いわゆる「和歌山府民」が多いベッドタウンである。その橋本市で建設コンサルティングの国際航業(東京都千代田区)が開発を進めてきた太陽光発電所「和歌山・橋本ソーラーウェイ」がこの4月、完成した(図1)。

図1●和歌山・橋本ソーラーウェイ(出所:国際航業)
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 1万2500m2の敷地に2832枚の太陽光パネルを並べた同発電所は出力規模で708kW。太陽光パネルは東芝製(米サンパワー製)で、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製である。

 和歌山県は全国でも10指に入るほど年間の日照時間に恵まれている。だが、山林が多く、広い平地が少ない。全量買い取りの対象になる10kW以上の太陽光発電の設備認定は出力で32万3000kWと47都道府県中34番目だ(2014年2月末)。

 「和歌山・橋本ソーラーウェイ」の敷地も決して広い平地ではない。南北に細長く南側の3分の1ほどが傾斜地になっている。そして、不思議なことに発電所中央部分に当たる敷地がポッカリと空いている(図2)。これには理由がある。太陽光パネルが抜けた個所の地下には巨大なコンクリート容器が埋め込まれており、その中にダイオキシンで汚染された土壌が封入されているのである。

図2●和歌山・橋本ソーラーウェイを上空から撮影(出所:国際航業)
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 この敷地は、かつて大きな社会問題になったダイオキシン汚染の現場だった。もともと産業廃棄物処理業者が所有していた土地だったが、汚染対策を進めるために2003年に県が業者から1億円で買い取った。汚染を除去した後も10年間、使い道のないまま放置されてきた。昨年7月、和歌山県はこの負の遺産を有効活用する目的で、太陽光発電の事業用地として貸与する公募を実施。国際航業が事業者として選ばれた。