本記事は、国内外の特許情報などの公的データを収集・解析し、企業などの知財力を分析しているアスタミューゼ(astamuse)が2014年6月10日に公開したコラム「サッカー ブラジルW杯で注目を集める世界のトッププレイヤーが履くスパイクの秘密を分析」を基に、日経テクノロジーオンラインが再編集したものです。

 今回は、独アディダス社、米ナイキ社、ミズノの3社を中心に、欧州市場での知財力を検証いていきます(図表の見方や用語については「国内編」と下の用語解説を参照)。

用語解説
  • 知財スコア:特許の強みと弱みを数値化したもの。後発特許にどれくらい参照されたかなどを勘案している
  • 知財総合力:知財スコアを基に、特許の有効余命年数(特許権利の有効期間)を掛け合せたり、出願した特許全件におけるスコアの偏差値を考慮したりして算出
  • 技術力スコア:技術を有効活用年数や、他社への影響度などを考慮して算出
  • 技術パフォーマンス力:高スコアとなった技術件数を、その企業が保有する技術全体の数で割り戻したもの。技術パフォーマンス力が高いとは、粒ぞろいの技術を保有していることになる
図1 欧州市場におけるスポーツ用品メーカーの知財力
図1 欧州市場におけるスポーツ用品メーカーの知財力
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 世界中から欧州特許庁に出願されたサッカーシューズ関連特許は785件ありました。図1を見ると、アディダスが知財総合力で圧倒的な強さを見せています。出願件数ではナイキが70件と最も多く、アディダスは47件とナイキの半分強しかないにもかかわらず(下表参照)、総合力は圧倒的でした。

表 欧州市場におけるスポーツ用品メーカーの知財力詳細
表 欧州市場におけるスポーツ用品メーカーの知財力詳細
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図2 欧州市場におけるスポーツ用品メーカーの技術パフォーマンス力
図2 欧州市場におけるスポーツ用品メーカーの技術パフォーマンス力
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 この傾向は、技術パフォーマンス力でさらに顕著に表れています(図2)。技術の粒揃い度や将来性に関しては、アディダス圧勝というところです。

 ただ、一点だけ留意するポイントがあります。表中の平均余命(特許権利の有効期間の平均値)と、平均優位余命(他社よりも優位に立てる特許の有効余命年数の平均値)が、日本市場や米国市場での特許よりもかなり短く、3年未満となっている点です。これはアディダスだけでなくナイキやプーマも同様です。欧州では、新しい特許の権利化にあまり注力していない、あるいは戦略的に他地域に重点を置いている可能性があります。