今回は、独アディダス社、米ナイキ社、ミズノの3社を中心に、欧州市場での知財力を検証いていきます(図表の見方や用語については「国内編」と下の用語解説を参照)。
- 知財スコア:特許の強みと弱みを数値化したもの。後発特許にどれくらい参照されたかなどを勘案している
- 知財総合力:知財スコアを基に、特許の有効余命年数(特許権利の有効期間)を掛け合せたり、出願した特許全件におけるスコアの偏差値を考慮したりして算出
- 技術力スコア:技術を有効活用年数や、他社への影響度などを考慮して算出
- 技術パフォーマンス力:高スコアとなった技術件数を、その企業が保有する技術全体の数で割り戻したもの。技術パフォーマンス力が高いとは、粒ぞろいの技術を保有していることになる
世界中から欧州特許庁に出願されたサッカーシューズ関連特許は785件ありました。図1を見ると、アディダスが知財総合力で圧倒的な強さを見せています。出願件数ではナイキが70件と最も多く、アディダスは47件とナイキの半分強しかないにもかかわらず(下表参照)、総合力は圧倒的でした。
この傾向は、技術パフォーマンス力でさらに顕著に表れています(図2)。技術の粒揃い度や将来性に関しては、アディダス圧勝というところです。
ただ、一点だけ留意するポイントがあります。表中の平均余命(特許権利の有効期間の平均値)と、平均優位余命(他社よりも優位に立てる特許の有効余命年数の平均値)が、日本市場や米国市場での特許よりもかなり短く、3年未満となっている点です。これはアディダスだけでなくナイキやプーマも同様です。欧州では、新しい特許の権利化にあまり注力していない、あるいは戦略的に他地域に重点を置いている可能性があります。