四角く、平面であること─。長らく、ディスプレイはこうした常識にとらわれてきた。しかし、プロジェクション・マッピングへの熱狂が「立体化」の道があることを示した。平面から立体に変わったディスプレイは、実物感や没入感などの新しい価値を生み出す。

 「残念。中止なのか」─。

 建造物などの立体物をスクリーンとして、その形状に合わせて調整した映像をプロジェクターで投射する、いわゆる「プロジェクション・マッピング」。装いを新たにした東京駅・丸の内駅舎を舞台に開催されたプロジェクション・マッピング・ショーは、それが人を強く引き付ける表現手法であることを証明した。

 2012年9月に開催された「TOKYO STATION VISION」と同年12月に開催された「TOKYO HIKARI VISION 」。どちらのプロジェクション・マッピング・ショーも、警備に支障が出て主催者が中止を決断せざるを得ないほどの観客を集めたのだ(図1)。

図1 東京駅のプロジェクション・マッピングが話題に
2012年後半にJR東京駅の丸の内駅舎で開催されたプロジェクション・マッピングのイベント は、どちらも警備に支障が出るほどの観衆を集めた。(上の写真:NHKエンタープライズ、下の 写真:東京ミチテラス2012実行委員会)
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 立体物がスクリーンになると、平面のスクリーンに映像を投射するのとは異なる体験が得られる。例えば「建物に映像を映し出すときには、その建物が姿を変えたかのような表現ができる。人は本来の建物を意識しながら見ているため、姿が変わることへの驚きを感じる」(電気通信大学 情報工学科 コンピュータ学講座 准教授の橋本直己氏)。