太陽光の安定収入を経営に生かす

 県はメガソーラー誘致にも具体的に動いており、その1つが県内で建設計画が固まった事業者と県・市町村間で結ぶ「3者協定」だ。内容は「県や市町村は建設の円滑化に協力する」「事業者は地域産業の発展に努める」「3者は協力して太陽光発電の普及啓発に努める」といった一般的なものだが、3者協定締結の都度、県は記者発表を行い、県のホームページでも広報する。こうした後押しがヒラオカ石油のような県外の中小企業でも事業をスムーズに運ぶうえで役立ったという。

 ヒラオカ石油が荒尾市に建設したメガソーラーでは、太陽光パネルは韓国・ハンファグループ傘下でドイツ最大手のハンファQセルズ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。太陽光発電所の設計と部材の調達はHUGエナジーが担い、建設は3者協定を尊重して地元建設業者に依頼した。ハンファQセルズ製パネルについては、HUGエナジーの半導体材料の技術者が工場を訪れ、製造工程を含めてセル材料の品質などを確認して決めたという(図7)。HUGエナジーは、EPCサービスへの参入に際し、半導体関連の技術者を採用していた。事前の立地やパネルの入念な調査の甲斐もあり、建設後1年間の発電量はメーカー予測を21%上回った。

 木更津を含めて計4.75MWの太陽光発電所の売電事業はヒラオカ石油に安定収入をもたらす。石油販売は厳しさを増す。企業体力のわずかな差が他社との競争で生き残る決め手になる局面もあり得る。新たに手掛けた太陽光発電事業を本業の安定につなげたいというのが平岡社長の構想だ。かつて炭鉱で賑わった地に石油販売業者が建設したメガソーラーは、100年のエネルギーの変遷を映し出している。

図7●ハンファQセルズ製パネルが並ぶ(出所:日経BP)
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●施設の概要
名称ヒラオカ石油・荒尾市ソーラー発電所
完工2013年4月
出力規模2MW
所在地熊本県荒尾市原万田字星ヶ谷106番地6
発電事業者ヒラオカ石油
設計・施工管理HUGエナジー
O&M(運営・保守) HUGエナジー
太陽光パネルハンファQセルズ製
パワーコンディショナー東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製