工具の役割がより重要に

 工具はさまざまな進歩を遂げているが、そこでも高品位な切削面を得るという視点は重要だ。現在ダイヤモンド・コーティングを施した超硬合金製工具によって、超硬合金を切削することが可能になったといわれている。除去加工は十分にできると思われるが、切削面に劣化層が残っていないかどうかには注意する必要がある。

 超硬合金は焼結体であり、例えば炭化タングステン(WC)をコバルト(Co)のバインダでつなぎ、固めた構造をしている。超硬合金を被削材として加工する場合、材料の一部を除去すること自体はそれほど難しくはないが、同時にバインダの部分に細かい割れなどが残りやすいためだ。

 炭素繊維強化樹脂(CFRP)のように仕上げが難しい材料に対しても、工具の果たす役割は大きい。筆者は20年以上前に、砥石を10万rpmという高速で回転させることでCFRPをきれいに切削した経験があるが、その後ダイヤモンド焼結体(PCD、Poly Crystalline Diamond)のエンドミルを焼きばめで3μm程度の高い振れ精度にした工具も提案した。振れ精度や刃ぞろい精度を抑えれば、“削り残し”であるバリをほとんどなくせる。炭素繊維によって工具は摩耗しがちなので、基本的にはPCDにする必要があると思う。PCD工具は、中国でも大量に生産が始まっている。