二極化する中国市場

 しかもスマートフォンには、フィーチャーフォンと比較して日本メーカーが得意とする高性能部品が多く使用される。村田製作所の現地法人、村田投資有限公司で董事兼総裁を務める丸山英毅氏は「中国でもスマートフォン向けに、0603サイズの積層セラミック・コンデンサ(MLCC)が大量に使用されている。一部の機種では、0402サイズも使われ始めている」という。0402サイズのMLCCは、米Apple社のiPhone 4Sも搭載する最先端の部品である。

 消費者の収入格差が大きい中国では、日本や欧米以上にスマートフォンの二極化が進んでいる。iPhoneや韓国Samsung Electronics社のGalaxyシリーズの高級機種の対抗製品として出された2000~3000元台のハイエンド端末と、機能を絞って価格を1000元以下に抑えたローエンド端末である(図2)。

図2 中国スマートフォンに求められる部品
高級スマートフォンには米Apple社や韓国Samsung Electronics社などのハイエンド端末とほぼ同等の部品が使用される。一方1000元以下のスマートフォンには、廉価版の部品やフィーチャーフォンで使用されていた部品が多く使用される。
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 2000~3000元台のハイエンド端末には、前述のMLCCがそうであるように、Apple社やSamsung社の製品と同等の高性能部品が使われている。広視野角のIPS液晶パネルはもちろん、Huawei Technologies社(華為)の「Ascend P1 S」のように有機ELパネルを採用する端末も登場している。前面カメラと高画素の背面カメラを搭載し、加速度センサのほか角速度センサや気圧センサ、電子コンパスといった、Android OSがサポートする各種センサもすべて内蔵する。パナソニック デバイス社 業界マーケティングセンター 所次長の榎並英明氏は「高密度実装にともなう熱の問題が大きいため、中国でもグラファイト製の放熱シートの需要が伸びている」と語る。このほか、防水スピーカーや全層Interstitial Via Hole(IVH)構造の多層基板を採用するケースも増えているという。

全層IVH構造の多層基板=非貫通のビア(Interstitial Via Hole)ですべての層間を接続する多層基板。通常のIVH構造の多層基板や貫通構造の多層基板に比べてビアの配置の自由度が高く、基板の表面積を有効に利用できるのが特徴。部品の高密度実装が求められるスマートフォンなどの小型機器に多く使用されている。

 一方、価格が1000元以下のローエンド端末は、コストを抑えるために廉価版の部品やフィーチャーフォンで使用されていた汎用部品が多く使用されている。中国でも大画面を求める消費者が多いことから画面のサイズは全体的に大きくなる傾向にあるが、タッチパネルは感度の悪いモジュールを使っていることが多い。カメラは背面に低画素のものしか搭載していない場合が多く、センサも加速度センサなど限られたものしか内蔵していない。熱対策も、低性能な放熱シートや金属板などを使ってコスト低減を図っている。