ただし、その場合でも、事故の責任が、設計上の不良に起因するのか、施工の不良に起因するのかを突き止めない限り、事故の責任を問えない。

吉富 その通り。ファイナンス上の契約に基づく責任と、法律に基づく責任とは必ずしも一致していないことに注意する必要がある。また、それ以前に、自損と加害という区分を明確にしておく必要がある。太陽光発電システム関連の事業者を見ていると、このうち加害の可能性についての認識が甘いように感じる。

 太陽光発電システムの事故で被害が発生した場合、わたしは、住宅用であっても発電システムの購入者に訴訟を提起するように勧めている。しかし、被害の金額が相対的に少ないこともあって、実際の訴訟に至るケースは少ない。

 ただし、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の場合、出力規模が格段に大きく、投じられる金額も桁違いに大きいため、同じような事故が起きた場合、発電事業者がメーカーや建設事業者を訴える可能性が高いと予想している。

 こうした民法上の不法行為に基づく損害賠償責任のほか、第3回で紹介したような、法が求める最低基準に対して3~9%しか耐力がないシステムに事故が起きてしまった場合には、行政罰が自動的に下るくらいの不正抑止力が必要と感じている。

 ただし、たとえ死傷事故になろうとも、設計者や施工者のうっかりミスに対して司法が過度に介入することには、賛成しない。ヒューマンエラーを“犯罪化”すると当事者を畏縮させ、再発防止に手が回らなくなるからである。そのような意味で、「捜査」よりも「調査」を優先させようという、消費者庁での議論には、優れた意義がある。

 今必要とされるのは、あくまで、構造設計をサボったとか「故意の不作為」への不正抑止力である。しかも、この抑止力は、事後的ではなく予防的である必要がある。誰だって、事故を損害賠償してもらうより、最初から事故が起こらないことを望むはずだからである。