3タイプの薬剤で腐食とシロアリを防ぐ

 木製架台で大きな課題になるのが、発電事業を続ける20年の間、腐ったりシロアリに食べられたりする被害からいかに防ぐかだ。木造建築の場合も同じリスクはあるが、木の柱は外壁などで守られている。20年間、直接、風雨にさらされ続ける架台の場合、一般的な建材以上の防食防蟻対策が必要になる。そこで、防食防蟻処理を手掛ける企業などとも相談し、薬剤を加圧・注入することで、十分な防食防蟻性を得られることが分かった。

 「住友林業鹿島ソーラー発電所」は、住友林業にとって初めての木製架台ということもあり、3タイプの防食防蟻剤を使った。ホウ素化合物を主成分とするホウ酸塩(図5)、銅化合物を主成分とするマイトレックAQC(図6)とCUAZ(図7)だ。いずれも公園などで広く使われている防食防蟻剤だ。また、虫害に強く、高い耐腐食性を持つとされるヒバ材を使い、防食防蟻剤で処理していない角材による架台も、実証的な意味合いから設置した(図8)。

図5●ホウ酸塩で処理した木製架台
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図6●マイトレックAQCで処理した木製架台
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図7●CUAZで処理した木製架台
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図8●ヒバ材を使って防食防蟻処理していない木製架台
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 建設コストを削減する上で重要になるのが、施工性の高さだ。架台を作るのに使う角材は、すべて事前に協力工場でプレカットしてから、防食防蟻処理したうえで、発電所の建設現場に運び込み、作業者が接合金具とビスで組み上げる。現場ではノコギリは使わない。角材と角材の接合部は、基本的に6本のビスで固定する(図9)。また、太陽光パネルと角材との固定は、専用の金具を作り、ビス2本で固定した(図10・11)。ビスの長さは約5cm。これを電動ドライバーで次々とねじ込んでいく。木製架台を組み上げた作業者は、大工などの専門家ではなく、こうした木材の接合作業を初めて担当した人がほとんどだった。それでも慣れてくると、4人1チームで1日に15ユニットも作れるようになったという。

図9●角材と角材の接合部分
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図10●パネルを角材に固定した箇所
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]
図11●パネルを設置中の木製架台
(出所:住友林業)
[画像のクリックで拡大表示]