メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、発電事業者が電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術の基本に答えた。

 保守・メンテナンスの目的は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に基づいて、20年間の売電、すなわちメガソーラー(大規模太陽光発電所)の稼働率を担保することにあります。

 パワーコンディショナー(PCS)の保守・メンテナンスの内容は、主に三つに分けられます。日常点検、定期点検(法定点検)、細密点検です。

 このうち、日常点検とは、PCSのユーザーである発電事業者が日常的に発電設備を見回る中で、主に視覚、聴覚、臭覚など五感による異常の有無を点検するものです。例えば、表示の異常や異音がするといった具合です。

 定期点検は、法定点検として1年間に2回実施するもので、各地の電気保安協会やO&M(運用・保守)事業者が担当することが多いでしょう。日常点検と同じように、五感による点検に加えて、絶縁抵抗値などを計測します(図1)。点検の目的は、電気部品やケーブルなどの劣化の把握です。

図1●定期点検では、五感による点検に加えて、絶縁抵抗値などを計測し、主に電気部品やケーブルなどの劣化を把握する
(出所:著者)
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 また、定期点検には、系統連系リレーの健全性を維持するためのリレー試験があります。このリレー試験は、系統側の電圧や周波数の擾乱を検知して運転を停止するという、系統連系における重要な機能を担うものです。ただし、このリレーを検査するためには、発電を停止する必要があります。

 PCSは、パワー半導体やリアクトル、制御基板など中核となる部品を中心に、数千点規模の部品で構成されています。そのうち一つでも狂いが生じると、異常が発生することになります。

 こうした装置であるために、TMEICでは、メガソーラー用のPCSは空調で温度と湿度を管理した場所で使用することを前提としています。導入コストは高いかもしれませんが、20年間稼働した場合の総コストでは、顧客のコストを最小化するという発想です。